64歳11か月で会社員生活を終えた
9月生まれの私は、2024年8月、64歳と11か月で長かった会社員生活を終えました。
「あと1か月で65歳なのに、なぜそこまで働かなかったの?」と思われるかもしれません。
実は、これにはちゃんと理由があります。
65歳になる前に退職するか、65歳になってから退職するかで、失業給付の扱いが大きく変わるからです。
たった1か月。されど1か月。
このあたりは、知らないとかなり大きな違いになります。
ただ、この話を始めると健康保険の話までたどり着けなくなりますので、これはまた別の話にします。
今回のお話は、会社を辞めたら、健康保険はどうなるのか。です。
会社を辞めた翌日、会社の健康保険も終わる
40年以上会社員をやっていると、健康保険について深く考える機会はそれほどありません。
病院へ行けば健康保険が使える。
保険料は毎月、給与から勝手に引かれている。
それだけです。
給与明細を見て、「健康保険料、高いなあ」と思うことはあっても、その仕組みまで調べたことはありませんでした。
ところが会社を辞めると、突然状況が変わります。
それまで加入していた会社の健康保険は、退職によって資格を失います。
「40年以上入っていたんだから、少しくらいサービスしてくれても」
と言いたいところですが、そんな制度ではありません。
退職したら、自分で次の健康保険を決めなければなりません。
会社員のときには総務担当者が手続きをしてくれました。
ところが退職すると、自分が総務部です。
年金担当も自分。
健康保険担当も自分。
税金担当も自分。
定年後は仕事がなくなると思っていたら、いきなり小さな会社の総務部長になったようなものです。
もちろん、給料は出ません。
会社員時代は会社が半分払ってくれていた
退職して改めて気がついたことがあります。
会社員時代の健康保険料は、会社が半分負担してくれていたということです。
健康保険料は原則として労使折半です。
たとえば本人の給与から毎月2万円引かれていたとすれば、会社側も同程度を負担しています。
会社員時代には、「毎月2万円も取られている」と思います。
でも会社を辞めて初めて、「会社も払ってくれていたんだ」と分かります。
会社員生活が長いと、会社がやってくれていることは空気のようになってしまいます。
なくなって初めてありがたみが分かる。
まるで家事のようなものです。
……この話を妻の前でするのは危険なので、健康保険の話に戻ります。
退職後には「任意継続」という制度がある
会社を退職したあとには、それまで加入していた健康保険を一定期間続けられる任意継続という制度があります。
協会けんぽの場合、一定の加入期間などの条件を満たし、原則として資格喪失日から20日以内に手続きすれば、最長2年間加入できます。
ただし、大きな違いがあります。
会社員時代は会社と折半だった保険料を、任意継続では全額自分で負担します。
となれば当然、「健康保険料が2倍になるのか!」と思います。
私もそう考えました。
退職して給料がなくなる。
その途端に健康保険料が2倍。
「長い間お疲れさまでした」
の次に、「では保険料は2倍です」
では、ずいぶん冷たい話です。
ところが、調べてみると少し違いました。
任意継続には保険料計算の上限があった
任意継続の保険料には、計算の基礎となる標準報酬月額に上限があります。
2024年度、私が加入していたけんぽ支部の場合、その上限は標準報酬月額30万円でした。
つまり退職前の給与が30万円を大きく超えていたとしても、任意継続の保険料を計算するときには、一定の上限で頭打ちになるわけです。
私の場合、この上限に該当しました。
65歳以降の健康保険料は、おおむね、月3万円。
正確には2024年度の上限額で月29,340円でした。
ですから、「会社員時代に自分が払っていた健康保険料を、そのまま2倍する」という計算にはなりませんでした。
この月約3万円という数字を見て、「これなら、とりあえず任意継続でいいだろう」と判断しました。
国民健康保険という選択肢もあった
もちろん、退職後の健康保険は任意継続だけではありません。
国民健康保険へ加入する方法もあります。
そこで、「国保ならもっと安いのでは?」と考えます。
ところが、ここで問題になるのが前年の所得です。
国民健康保険料は、前年の所得をもとに計算される部分があります。
会社を辞めた本人としては、「もう給料はないんだけど」と思います。
しかし役所から見れば、「去年は給料をもらっていましたよね」となります。
間違ってはいません。
実に正しい。
でも、財布としては納得しづらい。
2024年8月まで私は会社員として働いていました。
退職した翌月から収入が一気に減ったとしても、国民健康保険料がその瞬間から年金生活者並みに安くなるわけではありません。
そこで退職時点では、任意継続の月約3万円のほうが分かりやすく、私には有利だろうと判断しました。
妻の健康保険も考えなければならない
もう一つ重要だったのが、妻の存在です。
会社員の健康保険には「扶養」という仕組みがあります。
条件を満たした家族なら被扶養者として加入でき、家族一人増えたからといって、その人数分だけ健康保険料が増えるわけではありません。
任意継続にも、この被扶養者の仕組みがあります。
ところが国民健康保険には、会社の健康保険と同じ意味での「扶養」がありません。
ですから退職後の保険料を比較するときには、私一人でいくらかではなく、
夫婦二人でいくらになるのかを見なければなりません。
この点から見ても、退職直後に任意継続を選んだのは、私にとっては自然な選択でした。
こうして月約3万円の任意継続を選んだ
整理すると、2024年8月に会社を辞めた私が任意継続を選んだ理由は、
- 会社員時代は会社が健康保険料を半分負担していた。
- 退職後の任意継続では、その会社負担がなくなり全額自己負担になる。
- しかし、任意継続には保険料計算上の上限があり、私の場合は月約3万円で済んだ。
- 国民健康保険は前年所得の影響を受けるので、現役時代の給与所得が残っている退職直後には、必ずしも安くならない。
- さらに妻の保険も一緒に考える必要がある。
これらを比べて、「まずは任意継続にしよう」と決めました。
ここで大事なのは、任意継続がいつでも国保より安いわけではないということです。
正しくは、2024年に退職した時点の私には、任意継続が合っていたということです。
ところが、時間がたつと状況が変わった
その後、会社員時代の給与収入はなくなり、私の生活は年金中心へ変わっていきました。
すると当然、国民健康保険料の計算に使われる所得も変わってきます。
今回、2026年4月現在を改めて調べてみたところ、国民健康保険へ切り替えた場合の負担は、月にすると約1万6,000円。
任意継続は、月約3万円。
その差は、月約1万4,000円。
ここまで違えば、「まあ面倒だから、このままでいいか」とは言っていられません。
4月から任意継続の2年間の期限である8月までの5か月なら、
1万4,000円 × 5か月 = 約7万円。

7万円あれば、ずいぶん違います。
スーパーで数十円安い卵を探している場合ではありません。
私はここで、「任意継続をやめて、国民健康保険へ変えたほうがいい」と判断することになります。
健康保険は「一度決めたら終わり」ではなかった
退職して分かったことがあります。
退職後の健康保険は、「任意継続と国保、どちらが得ですか?」と一度だけ比べれば終わる話ではありません。
2024年には任意継続が有利だった。
しかし、所得が下がった後には国保が有利になった。
私の場合、毎月約3万円 → 約1万6,000円。
月約1万4,000円の差が出ました。
つまり、去年の正解が、今年も正解とは限らない。
これが退職後の健康保険の面倒なところであり、同時に一番注意しなければならないところだと思います。
会社員時代なら健康保険料は給与から自動的に引かれます。
退職後は、自分で調べなければ誰も、「今年はこちらのほうが安いですよ」とは教えてくれません。
役所も協会けんぽも、聞けばきちんと教えてくれます。
しかし、聞きに行くのは自分です。
定年後、時間はできました。
どうやら、その時間の一部は社会保険制度を勉強するために用意されていたようです。
そして私は最終的に、2026年4月、任意継続から国民健康保険へ切り替える事にしました。
月約3万円だった任意継続が、なぜ国保では約1万6,000円になったのか。
実際にどんな計算をして、どのタイミングで切り替えたのか。
次は、私が任意継続から国民健康保険へ変更した理由について書いてみたいと思います。



コメント