- 東京都だけ別リーグだった
~地方税収ランキングから見えた日本の姿~
「東京人」みたいな顔をして暮らしています
関西の片田舎から東京へ転勤して、気が付けば40年。 現在住んでいるのは埼玉県ですが、ほとんど「生粋の東京人」みたいな顔をして、すましながら暮らしています(笑)。
東京へ転勤したばかりの若かりし頃、会社の先輩にニヤリと笑いながらこんなことを言われました。 「東京はな、お金さえあれば飲みに行っても、女の子と遊んでも、洋服を選ぶのも世界一楽しい街だよ。……そう、お金さえあればね」
若かった私は、「なるほど、そんなものか」くらいに聞き流していました。 しかし、40年暮らしてみた現在の結論は――「先輩、まったくその通りでした」。

東京には本当に何でもあります。美術館、劇場、プロ野球、コンサート、最新家電、そして行列の絶えないラーメン屋さん。「無いものを探す方が難しい街」です。 その代わり、家賃も高い。駐車場も高い。ちょっとした外食も高い。 気が付くと財布の中身まで驚くほど軽くしてくれる、実にとびきり親切(?)な街でもあります。
都道府県が自由に使える地方税
そんなわけで、現役を引退した私は、物価の高い東京のど真ん中には住まず、電車で1時間もかからず都心へ行ける埼玉県に居を構え続けています。普段は物価も穏やかで便利な郊外で暮らし、大自然を見たくなれば旅行に出かける。年金生活に入った私たち夫婦には、この「つかず離れず」の距離感がちょうどいいのです。
そんなある日、新聞で「都道府県が自由に使える税収」というグラフを見かけました。 そこでの東京都の立ち位置は、まるで別次元。 「やっぱり東京はお金持ちなんだな」と思った一方で、ふとした疑問が湧いてきました。
「法人税は国税だし、所得税も国税。それなのに、どうして東京都だけがこんなに地方税収も飛び抜けているんだろう?」
(実は、地方税の中にも、会社の儲けにかかる『法人住民税』や『事業税』、個人の所得にかかる『個人住民税』があり、これらが東京に一極集中しているからなのですが……。)
気になったら夜も眠れなくなるのがシニアの性(さが)。そこで今回は、総務省のデータ(e-Stat)を引っ張り出し、都道府県が実際に集めている「地方税」のリアルな数字を調べてみることにしました。
地方税の仕組みをざっくりおさらい
本題のランキングに行く前に、「地方税」について超特急でおさらいしておきましょう。
税金は、大きく分けると「国税」と「地方税」があります。
- 国税(国に納める): 所得税、法人税、相続税、消費税など
- 地方税(自治体に納める): 個人住民税、法人住民税、事業税、地方消費税、自動車税など
私たちは普段「税金」と一言で片付けがちですが、実は国に行くお金と、地元の自治体に入るお金に分かれているわけですね。
「普通税」と「目的税」の違い
さらに地方税は、その使い道によって2つに分かれます。
- 普通税: 使い道を限定しない税金。道路を造るのにも、学校の運営にも、消防や福祉にも、自治体が状況に合わせて自由に使える「お財布」です。
- 目的税: 「この目的のためだけに使います」と法律で決められている税金(市町村が取る『都市計画税』や、温泉に入るときに払う『入湯税』などが有名です)。
今回私が調査したのは、自治体が一番基本として自由に使える「普通税」のジャンルです。
総務省のデータでランキングを作ってみた
総務省にe-Statという日本の統計が閲覧できるポータルサイトが有ります。
膨大な統計データを閲覧、ダウンロードできるサイトで、今回、初めて閲覧してみました。
そのe-Statの地方財政状況調査「道府県税の徴収実績」から、直近(2023年度決算)の普通税の収入済額をランキングにしてみました。 全国平均(4,443億円)を基準に、どれだけ差があるかも計算しています。
| 順位 | 都道府県 | 地方税収 (億円) | 全国平均との差 (億円) |
|---|---|---|---|
| 🥇1 | 東京都 | 49,480.1 | +45,036.5 |
| 🥈2 | 大阪府 | 16,890.0 | +12,446.4 |
| 🥉3 | 神奈川県 | 13,609.9 | +9,166.3 |
| 4 | 愛知県 | 13,239.8 | +8,796.2 |
| 5 | 千葉県 | 12,755.8 | +8,312.2 |
| 6 | 埼玉県 | 8,385.7 | +3,942.1 |
| 7 | 兵庫県 | 8,310.9 | +3,867.3 |
| 8 | 福岡県 | 7,479.0 | +3,035.4 |
| 9 | 北海道 | 6,498.2 | +2,054.6 |
| 10 | 静岡県 | 4,967.1 | +523.5 |
| — | 全国平均 | 4,443.6 | ±0.0 |
| 11 | 茨城県 | 4,286.5 | -157.1 |
| 12 | 広島県 | 3,228.3 | -1,215.3 |
| 13 | 宮城県 | 3,133.2 | -1,310.4 |
| 14 | 京都府 | 2,940.2 | -1,503.4 |
| 15 | 三重県 | 2,935.2 | -1,508.4 |
| 16 | 新潟県 | 2,808.5 | -1,635.1 |
| 17 | 群馬県 | 2,723.9 | -1,719.7 |
| 18 | 岐阜県 | 2,639.2 | -1,804.4 |
| 19 | 岡山県 | 2,627.4 | -1,816.2 |
| 20 | 栃木県 | 2,600.6 | -1,843.0 |
| 21 | 福島県 | 2,509.1 | -1,934.5 |
| 22 | 長野県 | 2,501.2 | -1,942.4 |
| 23 | 山口県 | 1,992.8 | -2,450.8 |
| 24 | 滋賀県 | 1,856.4 | -2,587.3 |
| 25 | 愛媛県 | 1,713.8 | -2,729.8 |
| 26 | 熊本県 | 1,692.9 | -2,750.8 |
| 27 | 石川県 | 1,630.4 | -2,813.2 |
| 28 | 鹿児島県 | 1,629.4 | -2,814.2 |
| 29 | 沖縄県 | 1,529.6 | -2,914.0 |
| 30 | 富山県 | 1,520.7 | -2,922.9 |
| 31 | 青森県 | 1,472.3 | -2,971.3 |
| 32 | 大分県 | 1,459.2 | -2,984.4 |
| 33 | 長崎県 | 1,345.4 | -3,098.3 |
| 34 | 福井県 | 1,339.3 | -3,104.3 |
| 35 | 香川県 | 1,327.7 | -3,115.9 |
| 36 | 岩手県 | 1,292.2 | -3,151.4 |
| 37 | 奈良県 | 1,275.0 | -3,168.6 |
| 38 | 山形県 | 1,171.8 | -3,271.8 |
| 39 | 宮崎県 | 1,098.9 | -3,344.7 |
| 40 | 和歌山県 | 1,039.1 | -3,404.5 |
| 41 | 山梨県 | 1,006.8 | -3,436.8 |
| 42 | 佐賀県 | 988.5 | -3,455.1 |
| 43 | 秋田県 | 972.7 | -3,470.9 |
| 44 | 徳島県 | 861.9 | -3,581.7 |
| 45 | 島根県 | 824.7 | -3,618.9 |
| 46 | 高知県 | 679.9 | -3,763.7 |
| 47 | 鳥取県 | 578.6 | -3,865.1 |
出典:総務省 e-Stat「地方財政状況調査 都道府県分 調査表06 道府県税の徴収実績」2023年度決算。単位はExcelの「収入済額・合計」を億円換算。全国平均は47都道府県の単純平均。
えっ、東京都だけ競技が違う……?
数字をまとめてみて、思わず老眼鏡を外して目をこすってしまいました。
2023年度、47都道府県が徴収した普通税の合計は約21兆円でした。
そのうち東京都だけで約4兆9,500億円。
つまり、全国の都道府県税の約4分の1を東京都だけで集めている計算になります。
もちろん人口が多い(約1400万人)ことも理由ですが、それだけではこの数字は説明できません。日本中から大企業の本社が集まり、高所得者が集まり、巨大な経済活動そのものが集中している結果です。東京は「人が多い街」というより、ブラックホール並みに「お金が集まる街」なのだと思い知らされます。
2位以下も十分にすごい、けれど……
2位の大阪府(約1.7兆円)、3位の神奈川県(約1.4兆円)、4位の愛知県(約1.3兆円)、5位の千葉県(約1.27兆円)。ここまでは大台の1兆円超えです。
そして我が街・埼玉県は第6位。 「人口の多さ(全国5位)なら、お隣の千葉県にだって負けていないはず! 埼玉だって1兆円くらいあるだろう!」 と鼻息を荒くして総務省のExcelを開いたのですが、結果は約8,400億円。千葉県に一歩及ばず、1兆円の壁に跳ね返されました(笑)。やはり新聞を眺めるだけでなく、汗をかいて元データ(一次情報)を見に行くのは大切ですね。
東京都だけ「別リーグ」
このランキング、陸上競技に例えるなら、東京都だけウサイン・ボルトです。 大阪、神奈川、愛知、千葉が「日本代表トップ集団」だとすれば、埼玉、兵庫、福岡も十分に俊足。 しかし東京都だけは、「同じ100メートル走なのに、なぜか1人だけ最初から50メートル前を走っている」ような状態です。ずるをしているわけではないのですが、これだけ企業と富が集まれば、こういうスコアになってしまうのですね。
「税収が多い=一番豊かな県」なのか?
ここまでの数字を見ると、「やっぱり東京都が日本で一番豊かで、そこに住むのが一番幸せなんだろう」と思ってしまいます。
しかし、本当にそうでしょうか? 地方税収が多ければ、当然ながら道路の維持費も、学校の数も、増え続ける高齢者の福祉費も膨大になります。人が多い自治体ほど、出ていくお金(支出)も天文学的数字になるからです。
つまり、この「税収ランキング」だけでは、住民にとっての「本当の豊かさ」はまだ見えてきません。 実は、この後に登場する「財政力指数」という別の数字を見ると、また全く違った面白い景色が見えてくるのです。
次回は、 「税収が多い県」と「財政的に豊かな県」は同じなのか? 地方交付税という「国による仕送り」の仕組みも交えながら、さらに年金生活者目線で掘り下げてみたいと思います。
お楽しみに!



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