- S&P500一本にして良かったと思う年金生活者
4日間、株価を見なかったら……
先日、4日ほど旅行に出かけていました。
旅行中は車の運転やら何やらで忙しく、株価も為替もほとんど見ていませんでした。
事故なく無事に帰宅して、久しぶりに株価を確認してみたところ……。
なんじゃ、こりゃ! (『太陽にほえろ!』のジーパン刑事らしく)
日経平均もS&P500も、ずいぶん下がっているではありませんか。
特に日経平均の下落が目立ちます。
今年はAI関連企業への期待から、日米とも株価が大きく上昇してきました。
ところが、最近になって「AI関連企業の巨額な設備投資に見合うだけの利益が、本当に得られるのか」という疑問も出ています。
もしかして、とうとうAIバブルの崩壊が始まったのか?
そんなことを考えながら、今年の株価の動きを改めて眺めてみました。
すると、なかなか興味深いことが分かりました。
日経平均は半年で40%以上も上昇していた
私は以前から、S&P500(円建て・ドル建て)、日経平均、そしてドル円相場について、毎年1月の最初の取引日を100とした指数グラフを作っています。

今年も同じようにグラフを作っているのですが、改めて見ると日経平均の動きが尋常ではありません。
年初を100とすると、6月には140を超えていました。
つまり、わずか半年ほどで40%以上の上昇です。
仮に今年1月に100万円を日経平均連動型の投資信託に投資していれば、6月には140万円以上になっていた計算です。
半年で40万円以上の利益!
年金生活者にとっては、かなり魅力的な数字です。
我が家の公的年金に換算すれば、夫婦で1か月以上暮らせる金額です。
もっとも、私が年初に日経平均を買っていたわけではありません。
単にグラフを見て、他人の利益を計算しているだけです。
それでも、こういう数字を見ると、人間というものは欲深いもので、
「あのとき買っておけば良かったなあ」
などと考えてしまいます。
しかし、その日経平均も現在は指数120台まで下がってきました。
実際、6月に7万2,000円台まで上昇した日経平均は、10月28日には6万3,954円。
高値から1割以上も下落しています。
それでも年初に買った人なら、まだ20%以上の利益が残っています。
年初から持っている人にとっては大儲け。ところが、途中から買った人にとっては大損かもしれない。
ここが株式投資の面白くも恐ろしいところです。
同じ日経平均でも、天国と地獄
例えば、今年の1月に100万円を日経平均に投資した人。
現在の評価額は、グラフ上ではおよそ124万円です。
24万円ほどの含み益があります。
ところが、6月の高値付近で100万円を投資した人はどうでしょう。
現在の評価額は約86万円。
こちらは14万円ほどの含み損です。
同じ日経平均に連動する商品を持っているのに、一方は24万円の利益、もう一方は14万円の損失。
その差は38万円にもなります。
恐ろしい話です。
しかも、今年初めて投資を始めた人の中には、日経平均の好調ぶりをテレビやネットで見て、購入を決めた人もいるのではないでしょうか。
4月、日経平均がどんどん上がっている。
「ガイド通りもう少し様子を見よう」
5月、さらに上がる。
「やっぱり日本株は強いなあ」
6月、ついに我慢できなくなる。
「このままでは乗り遅れる!」
最高値のところで、思い切って購入。
ところが、買った途端に株価が下がり始めます。
最初は余裕です。
「株価には調整がつきもの。そのうち戻るだろう」
しかし、7月、8月、9月と一向に高値を回復しません。
そして10月。
「もうダメだ! これ以上損が増える前に売ってしまおう!」
こうして、見事な高値買い、安値売りが完成します。
もちろん、実際にどれだけの人がこのような損切りをしたかは分かりません。
しかし、投資の世界では昔から繰り返されている光景でしょう。
そして皮肉なことに、自分が売った途端に株価が反発する。
これも、よく聞く話です。
そもそもAIバブルは崩壊したのか?
今回の株価下落で気になるのは、やはりAI関連企業の動向です。
生成AIが登場してから、半導体メーカー、クラウド事業者、データセンター関連企業などに、莫大な資金が流れ込んできました。
AIの開発には高性能な半導体が必要です。
その半導体を動かすには、大量の電力も必要です。
データセンターを建設し、通信設備を整備し、膨大な投資が続いています。
ところで、その投資したお金は、いつ回収できるのでしょうか。
もちろん、AIそのものは素晴らしい技術です。
私自身、ブログを書くときにも、調べ物をするときにもAIを利用しています。
もはや手放せない道具の一つです。
ただし、AIが優れた技術であることと、AI関連企業の株価が適正であることは、まったく別の話です。
どれほど素晴らしい技術であっても、将来の利益を過大に期待して株価が上昇すれば、いつか調整が起きます。
2000年前後のITバブルでも、インターネットそのものが間違った技術だったわけではありません。
むしろ、その後の社会を大きく変えました。
しかし、当時の株価には将来への期待が先行しすぎた企業も数多くありました。
AIも同じ道をたどるのでしょうか。
それとも、今後の収益拡大によって、現在の株価を正当化していくのでしょうか。
これは、まだ分かりません。
実際、10月28日には日経平均が反発し、AI・半導体関連株が再び買われています。
つまり、今のところはAIバブルが完全に崩壊したというより、期待と不安が交錯している状況なのでしょう。
もっとも、本格的なバブル崩壊というものは、崩壊している最中には分からないものです。
後になって振り返り、
「ああ、あのときがバブルだったのか」
と気付く。
その頃には、資産がずいぶん減っていたりするのですが……。
2022年、一度すべての投資をリセットした
そんな株価の動きを眺めながら、私はつくづく思います。
2022年に今の家を買い、投資を一度リセットしたあと、S&P500一本に絞って良かったなあ。
私は2014年頃からNISAで株式や投資信託を行っていましたが、2022年、現在の自宅を購入することになり、保有していたNISAの全資産を一度すべて解約しました。
それまで積み上げてきた投資を、いったん現金に戻したわけです。
そして引っ越した直後の2022年5月から投資を再開しました。
その際、日本株には一切投資せず、S&P500に絞りました。
理由は単純です。
日本の将来が暗いと思っていたからでも、アメリカが大好きだからでもありません。
世界的に事業を展開する米国の主要企業に幅広く投資できること。
背景を踏まえて長期投資の方針を納得して決められること。
それが大きな理由でした。
もっとも、S&P500も米国株への集中投資ですから、世界全体に均等に分散しているわけではありません。
米国経済が不調になれば、大きな影響を受けるでしょう。
円高になれば、円建ての評価額も減ります。
決して万能の投資先ではありません。
それでも、私にはS&P500が合っているようです。
下がっても心穏やかでいられる
今回、旅行中に株価が下がっていたことを知っても、実はそれほど驚きませんでした。
いや、日経平均の下落幅には少々驚きましたが、自分の資産がどうなるのかと不安になったわけではありません。
なぜなら、株価は上がることもあれば、下がることもあるからです。
当たり前の話ですが、これを本当に納得するのは簡単ではありません。
特に、自分のお金が減っていくのを見るのは、決して愉快なものではありません。
それでも、これまで何度も下落を経験してきました。
そして、そのたびに慌てて売却していたら、長期投資など続けられなかったでしょう。
現在の私の投資は、資産を最大限に増やすことだけが目的ではありません。
これからの年金生活を、少しでも豊かにするためのものです。
公的年金という定期的な収入もあります。
普通預金にも、ある程度のお金を置いています。
投資信託は、必要に応じて少しずつ取り崩して使う。
そして株価が大きく下がったときには、無理に売らず、取り崩しを一時的に見送る。
もちろん、こうした方法でも長期の下落が続けば、資金計画に影響は出ます。
それでも、毎日の株価に一喜一憂する必要はありません。
何より、株価が下がっても心穏やかでいられる。
これは、年金生活者にとって、とても大きなことだと思っています。
他人の儲けを追いかけない
もう一つ、今回の日経平均の動きを見て感じたことがあります。
それは、他人の儲けを追いかけないということです。
6月、日経平均が年初から40%以上も上昇していた頃、私のS&P500はそこまで上がっていませんでした。
そこで、
「日経平均の方が儲かるじゃないか!」
と考えて、S&P500を売って日本株に乗り換えていたらどうなっていたでしょう。
今回の下落で、ずいぶん嫌な思いをしたかもしれません。
もちろん、今後は日経平均が再び上昇し、S&P500を大きく上回る可能性もあります。
しかし、そのたびに投資先を乗り換えていては、いつまでたっても落ち着きません。
株価が上がっている商品を追いかけて購入し、下がったら別の商品へ乗り換える。
これを繰り返していたら、最後には何が残るのでしょう。
おそらく、売買記録と後悔だけが大量に残りそうです。
そもそも、私はもう67歳です。
これから20年、30年と資産を積み上げていく若い人とは、投資の目的が違います。
老後資金は、増やすためだけにあるのではありません。
使うためにあるのです。
そして、そのお金を使う前に株価が気になって眠れなくなるのでは、何とも本末転倒です。
年金生活者が投資で本当に手に入れたいもの
株式投資をしていると、どうしても運用成績が気になります。
今年は何%上がった。
あの人は何百万円儲けた。
日経平均が過去最高値を更新した。
そんな話を聞けば、誰だって気になるでしょう。
しかし、年金生活になってからは、少し考え方が変わりました。
もちろん、利益が出るのは嬉しいことです。
私だって、お金が増えれば喜びます。
ただ、日々の株価に振り回されながら生活するのは、できれば避けたい。
40年以上働いて、ようやく毎朝決まった時間に会社へ行かなくてもよい生活になったのです。
それなのに、今度は毎朝株価を確認し、日経平均が上がれば喜び、下がれば落ち込み、夜はニューヨーク市場が気になって眠れない。
それでは、会社を退職したはずなのに、証券市場に再就職したようなものです。
しかも、給料は出ません。
下手をすると、こちらがお金を払うことになります。
そんな年金生活は御免です。
今回のAI関連株への不安や日経平均の急落を見て、改めて思いました。
投資で大切なのは、最高の利益を追い求めることだけではありません。
自分が納得できる投資先を選び、無理のない金額で続けること。
そして、資産が増えたら、人生を楽しむために使うこと。
私がS&P500一本に絞った判断が、今後も正解であり続ける保証はありません。
ただ、少なくとも今の私には合っています。
株価が下がっても、心穏やかに暮らせる。
これ以上の運用成績は、なかなか数字には表せません。

さて、今日も株価は上がるのでしょうか。それとも下がるのでしょうか。
どちらにしても、今夜の晩酌の味が変わるほどのことではありません。
株価の上げ下げより、焼酎の飲み過ぎの方を心配した方がよほど健康のためになりそうです。(笑)


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