- 円安で“そう見えただけ”かもしれない話
ゴールデンウィーク。皆様、楽しまれましたでしょうか?
昔は「黄金週間」と訳されることもありました。
なんとも昭和っぽい響きで、私は嫌いではありません。
ところで、この「ゴールデンウィーク」という言葉、
もともとは日本の映画業界で使われ始めた言葉だそうです。
1950年代、
映画館の興行収入が最も高くなる“黄金の1週間”。
そこから、
「ゴールデンウィーク」と呼ばれるようになったとか。
つまり最初の“ゴールデン”は、金(ゴールド)ではなく、
映画会社の売上の話だったわけです。
日本で生まれた言葉をわざわざ訳して「黄金週間」と言っていたわけです。
そして今、本物の“ゴールド”が騒がれている
ここ数年、金の価格は凄い勢いで上昇してきました。
テレビでは、
「有事の金」
「安全資産」
「インフレに強い」
と連日のように解説。
街では金買取店が増え、CMでも「今こそ金!」。
なんだか、金を持っていないと時代に取り残されるような空気までありました。
しかし、私は金投資に全く興味がありません。
金の価格より、最近落ち着いてきた米の値段の方が気になります。

ですが、今回の金の価格の動きには非常に興味があります。
特に、「金の価格は本当に上がったのか?」
という点です。
“有事の金”なのに、最近の動きがおかしい
普通に考えると、
・世界情勢不安
・中東緊張
・ホルムズ海峡問題
・原油高騰
・インフレ懸念
ここまで揃えば、金はさらに上がって当然に見えます。
昔から、
「戦争に強い金」
と言われてきました。
ところが、最近の相場を見ると、どうも昔ほど単純ではない。
この5年間の金の価格(ドル建て、円建て)の変動と為替を見てみます。
(今回、田中貴金属のホームページを参考にさせていただきました。)
| 年月 | 海外ドル建価格 (ドル/トロイオンス) |
為替TTS平均(円) | 田中貴金属参考小売価格 (円/グラム) |
|---|---|---|---|
| 2021-06 | 1,834.57 | 111.13 | 6,554 |
| 2021-07 | 1,807.09 | 111.31 | 6,450 |
| 2021-08 | 1,783.97 | 110.84 | 6,369 |
| 2021-09 | 1,777.25 | 111.18 | 6,368 |
| 2021-10 | 1,776.85 | 114.11 | 6,495 |
| 2021-11 | 1,820.23 | 115.14 | 6,728 |
| 2021-12 | 1,786.65 | 114.88 | 6,580 |
| 2022-01 | 1,816.77 | 115.86 | 6,755 |
| 2022-02 | 1,856.30 | 116.23 | 6,913 |
| 2022-03 | 1,947.83 | 119.53 | 7,464 |
| 2022-04 | 1,933.90 | 126.98 | 7,901 |
| 2022-05 | 1,848.30 | 129.98 | 7,695 |
| 2022-06 | 1,833.83 | 134.93 | 7,954 |
| 2022-07 | 1,736.37 | 137.79 | 7,699 |
| 2022-08 | 1,765.65 | 136.26 | 7,721 |
| 2022-09 | 1,682.97 | 144.10 | 7,794 |
| 2022-10 | 1,664.45 | 148.19 | 7,920 |
| 2022-11 | 1,726.45 | 143.49 | 7,944 |
| 2022-12 | 1,796.74 | 136.12 | 7,854 |
| 2023-01 | 1,898.63 | 131.31 | 8,024 |
| 2023-02 | 1,854.54 | 133.76 | 7,990 |
| 2023-03 | 1,912.73 | 134.95 | 8,249 |
| 2023-04 | 2,000.42 | 134.40 | 8,620 |
| 2023-05 | 1,990.22 | 138.43 | 8,822 |
| 2023-06 | 1,942.90 | 142.27 | 8,871 |
| 2023-07 | 1,948.85 | 142.29 | 8,879 |
| 2023-08 | 1,920.03 | 145.85 | 8,988 |
| 2023-09 | 1,916.96 | 148.74 | 9,155 |
| 2023-10 | 1,913.04 | 150.61 | 9,246 |
| 2023-11 | 1,985.27 | 150.95 | 9,604 |
| 2023-12 | 2,029.29 | 145.11 | 9,486 |
| 2024-01 | 2,034.04 | 147.64 | 9,622 |
| 2024-02 | 2,023.24 | 150.50 | 9,779 |
| 2024-03 | 2,158.01 | 150.67 | 10,428 |
| 2024-04 | 2,335.49 | 154.52 | 11,561 |
| 2024-05 | 2,352.14 | 157.25 | 11,880 |
| 2024-06 | 2,326.33 | 158.90 | 11,859 |
| 2024-07 | 2,395.31 | 159.17 | 12,185 |
| 2024-08 | 2,467.97 | 147.25 | 11,675 |
| 2024-09 | 2,567.12 | 144.55 | 11,863 |
| 2024-10 | 2,690.08 | 150.69 | 12,978 |
| 2024-11 | 2,650.68 | 154.85 | 13,155 |
| 2024-12 | 2,644.07 | 154.55 | 13,082 |
| 2025-01 | 2,709.69 | 157.55 | 13,676 |
| 2025-02 | 2,894.73 | 153.02 | 14,169 |
| 2025-03 | 2,983.25 | 150.26 | 14,298 |
| 2025-04 | 3,207.48 | 145.49 | 14,996 |
| 2025-05 | 3,277.99 | 145.77 | 15,349 |
| 2025-06 | 3,352.00 | 145.55 | 15,638 |
| 2025-07 | 3,338.31 | 147.74 | 15,832 |
| 2025-08 | 3,362.99 | 148.71 | 16,020 |
| 2025-09 | 3,665.20 | 148.99 | 17,429 |
| 2025-10 | 4,053.28 | 152.30 | 19,836 |
| 2025-11 | 4,082.95 | 156.21 | 20,454 |
| 2025-12 | 4,289.48 | 156.95 | 21,716 |
| 2026-01 | 4,744.46 | 157.78 | 24,292 |
| 2026-02 | 5,019.53 | 156.13 | 25,137 |
| 2026-03 | 4,862.17 | 159.69 | 25,116 |
| 2026-04 | 4,723.88 | 160.33 | 24,396 |
むしろ、「原油高で金が下がる」ような場面すら出てきています。
これ、なかなか面白い現象です。
まずはドル建て金の価格を見てみる
図1を見てください。

(図1:ドル建て金価格)
2021年から2026年にかけて、確かに金の価格は大きく上昇しています。
最初の2021年には1トロイオンス1,800ドル前後だったものが、
2026年には5,000ドル近くまで上昇。
約2.7倍。
十分すごい。
世界的に見ても、
かなり大きな上昇です。
ところが円建てで見ると“異常”
次に図2。

(図2:円建て金価格)
こちらは、日本人が実際に見ている価格です。
するとどうでしょう。
上がり方が、ドル建てより明らかに激しい。
2021年には1グラム6,000円台だったものが、
2026年には2万5000円近く。
なんと約4倍。
ドル建て以上の勢いで、暴騰しています。
ここで、
「あれ?」
と思うわけです。
犯人はお前か(笑)
そこで図3。

(図3:ドル円チャート)
これを見ると、2021年に110円前後だったドル円が、2026年には160円前後。
円の価値が大きく下がっています。
つまり今回の“黄金高騰”。
実は、「金そのものの上昇」だけでなく、「円の価値低下」
がかなり大きく影響していた可能性があります。
日本人は“金価格”ではなく“円安”を見ていた?
例えば、
世界の基準であるドル建てで金の価格が2倍になったとしても、
その間に円がさらに下落すれば、
日本人から見る金価格は、
もっと大きく上昇して見える。
つまり、
「金(ゴールド)が強かった」
というより、
「円が弱くなった」
部分もかなり大きい。
ここで、2021年6月を100とした指数化グラフで見てみると、

最近、日経平均が非常に強いですが、「米国株最強!」という話を聞きます。
もちろん実際に強い。
ですが、日本人の資産増加には“円安ブースト”もかなり入っています。
今回の金の価格も、実は似た構造なんですね。
昔の“有事の金”とは少し違う
昔は、戦争や金融危機になると金(ゴールド)が買われました。
これは、「紙のお金が信用できなくなる」からです。
国家が破綻する。
通貨価値が暴落する。
そんな時、世界共通で価値を持つ金に資金が集まった。
これが、昔ながらの「有事の金」。
しかし今、市場が恐れているのは“物流停止”
最近の市場が本当に怖がっているのは、
金融危機というより、
「物が止まること」
です。
特に原油。
・タンカー
・トラック
・飛行機
・発電
・工場
・物流
全部つながっています。
つまり原油は、“文明の血液”なんですね。
どれだけAIが進化しても、半導体が増えても、
ガソリンが止まれば終わる。
物流が止まれば終わる。
だから最近の市場は、「安全資産としての金」より、
「現実に世界を動かすエネルギー」
を強く意識しているように見えます。
世界の共通価値は“ゴールド”ではなく“オイル”?
今回、ホルムズ海峡問題で改めて感じたのは、
世界の共通価値は、実は”ゴールド”ではなく、”オイル”なのでは?
ということです。
- 金(ゴールド)はいくら持っていても、車は走りません。
- 金(ゴールド)を燃やして発電する事はできない。
- 金(ゴールド)を使っても物流も動かない。
ですが原油は、世界経済そのものを回している。
つまり、
金は“価値保存”。
原油は“文明維持”。
役割が違うんですね。
そして最後に残るのは“通貨の問題”
今回の金の価格の高騰。
もちろん、世界不安の影響もあります。
ですが、日本人が感じている“異常な高騰感”には円安の影響がかなり大きい。
つまり私たちは、「金価格上昇」を見ていたようで、
実は、「円の体力低下」を見せられていたのかもしれません。
しかも、直近では、円安が進んでも金価格も下がっている。
昭和の“黄金週間”と令和の“黄金”
1950年代。
映画会社が作った「黄金の1週間」。
そして2026年。
本物の黄金(ゴールド)が役に立たないと世界中で話題になっている。
今回の相場を見ていると、金そのものより「円」の方が気になってきます。
昔の人は、「有事の金」と言いました。
しかし今の日本人。
もしかすると、“有事の円安”を見ているだけなのかもしれません。
もっとも我が家の場合、最近いちばん気を付けてみているのはスーパーの米5kgの価格ですが...


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