- ペロブスカイト太陽電池で見えた現実
Japan as No.1 から、もう一度考える日本の立ち位置
1979年、私が20歳の頃にアメリカで出版され、ベストセラーになった本があります。
その名も『Japan as No.1』。
日本の経済成長と、その成功要因を分析した一冊で、当時の日本人にとっては、なんとも誇らしい内容でした。(読んでいませんが...)
「日本はすごい国だ」
そう世界に言われた時代です。
もっとも、この本を読んだアメリカ人の受け取り方は様々だったでしょう。
「なるほど、日本から学ぼう」と考えた人もいれば、
「所詮はアメリカの真似をしているだけの小国だろう」と感じた人もいたはずです。
それから45年あまり。
昨日の朝日新聞に、ある記事が載っていました。
ペロブスカイト太陽電池の特許出願に関するものです。
フィルムのように薄く、曲がる。
軽くて設置場所を選ばない。
「次世代の再生可能エネルギーの本命」とまで言われている技術です。
そして、これは――
日本発の技術です。
ところが、その記事は、ペロブスカイト太陽電池の特許出願数で中国が日本を上回った。
なんとも既視感のある展開です。
なぜこうなるのか
せっかく日本で生まれた技術が、なぜ他国に主導権を握られてしまうのか。
少し整理してみました。
日本は「種を作るのがうまい」
ペロブスカイト太陽電池は、日本人研究者によって発展してきました。
初期の論文や特許も、日本がリードしています。
いわば、日本は、“いい種を作る国”
この点については、今でも世界トップクラスです。
中国は「全部取りに来る」
一方の中国。
- 大学も企業も、関連分野に一斉に参入。
- 特許は大量出願して囲い込み。
- さらに量産工場もどんどん立ち上げる。
「いいと思ったら全部取りに行く」
この姿勢が徹底しています。
人数の差は、正直どうしようもない
研究者数で見ると、
- 中国:約1万5千人
- 日本:約1千人
桁が違います。
これはつまり、試行回数の差=特許数の差
たとえ、いくら優秀でも、人数で10倍以上違えば、勝負は厳しい。
ビジネス化の考え方が違う
日本は慎重の上にも慎重です。
- 品質を確認してから
- 長期耐久性を見てから
- 万全の状態で市場へ
一方、中国は違います。
- まず出す
- そして売りながら改良する
- スケールで勝つ
「走りながら直す」
この差が、スピードの差になります。
国家の関与レベルが違う
ここはかなり大きいポイントです。
日本は基本的に民間主導。
政府は支援はするものの、主役ではありません。
対して中国は、
- 補助金
- 政策誘導
- 規制
すべてを組み合わせた国家戦略です。
まったくスケールが違うわけです。
市場の大きさが違う
昔の日本は、国内市場が小さく、国内消費より輸出頼みでした。
しかし中国は、自国だけで巨大市場です。
これがとにかく強い。
「国内で回せる」というのは、技術の進化スピードを一気に上げます。
スピードと試行回数
日本:とにかく慎重に一発勝負する。
中国:とにかく数を打ってから考える。
試行回数の差が、そのまま成果の差になる。
昔の日本と、今の中国
実はこの構図、どこかで見たことがあります。
昔の日本 vs 今の中国(本質比較)
| 項目 | 昔の日本(1980年代) | 今の中国(2020年代) |
|---|---|---|
| 立ち位置 | 追う側(米国に対して) | 追う+主導(日本・欧米に対して) |
| 技術源泉 | 米国技術を改良 | 日欧技術+自国開発 |
| 強み | 高品質・品質改善 | スピード・量・資金 |
| 弱み | 市場規模が小さい | 品質ばらつき・知財摩擦 |
| 国家関与 | 中程度(通産省など) | 非常に強い(国家戦略) |
| 市場 | 輸出依存 | 内需巨大+輸出 |
| 人材 | 少数精鋭 | 大量投入 |
| 戦い方 | 改良で勝つ | 数と速度で押す |
| 国際関係 | 米国の同盟国 | 対立・競争関係多い |
| 最終結果 | 一時的に世界制覇 → 規制で減速 | まだ進行中(覇権拡大中) |
つまり、昔、日本がやっていたことを、今中国がやっているとも言えます。
ただし、決定的な違いがあります。
一番重要な違い
昔の日本は、アメリカのルールの中で勝った。
しかし今の中国は、ルールそのものを変えに来ている。
ここが一番の違いです。
「日本はもうダメなのか?」
こういう話になると、必ず出てくるのがこの結論です。
「もう勝てないんじゃないか」
実はこれ、1985年頃のアメリカ人が、まったく同じことを言っていました。
当時のアメリカの空気はこんな感じです。
- 日本企業がニューヨークのビルを買収して日本企業名が溢れる
- 自動車も半導体も日本が席巻してアメリカの基幹産業が潰れる
- 「アメリカ終わった」
しかし現在はどうでしょう。
- 半導体 → アメリカが設計と装置で復活しています。
NVIDEA、Intel、AMD、Apple等や製造機器メーカー - IT → 完全にアメリカが支配している時代。
Google、Apple、Facebook、Amazon等
歴史は、そう単純ではありません。
日本の勝ち筋はあるのか
では、ペロブスカイト太陽電池で日本の勝ち筋はあるのでしょうか。
結論から言うと、正面で向かい合っての勝負は厳しい。
でも、戦い方を変えれば勝てる余地はある。
先ほどのアメリカの半導体やITと同じで、作っている国ではなく、“支配している側”が勝つ。
ルール側に回る
規格・知財・安全基準。
ルールを握った側が儲かる
たとえ量産が中国でも、ここで主導権を取れれば強い。
部品・素材で勝つ
これは日本のお家芸です。
- 高機能材料
- 製造装置
- 精密部品
要所さえ握れば、全部はやらなくていい、
「壊れたら困る市場」を取る
- 建材一体型(BIPV)
- インフラ用途
- 長寿命分野
こういった、信頼性が最優先の領域
ここは旧来から日本が強い分野です。
次の技術で先行する
- ハイブリッド型
- 次世代構造
日本には、“次を作る力”がある

最後に
ペロブスカイト太陽電池の話は、単なる技術だけの話ではありません。
これは、「これからの日本はどう戦うのか」という話です。
かつて世界を驚かせた、『Japan as No.1』の時代。
あの頃と同じことは、もうできないかもしれません。
しかし、違うやり方なら、まだ勝ち筋はある。
そう思いたいところです。
なんだか、最近の日本の戦いぶりを見ると、残念な気持ちになってしまう事が多いのも事実です。
だからこそ、ここで一矢報いてもらいたい。
そんな気持ちになります。



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