- トヨタ50兆円時代に感じた日本の危機
最初のマイカーは10万キロオーバーのセリカだった
トヨタの売上が5年連続で過去最高を更新し、ついに50兆円を超えた――
そんなニュースで盛り上がっていました。
さすが世界のトヨタです。
若い頃、中古のダルマセリカ1600GTを買って、嬉しくて夜中に意味もなく走り回っていた私としては、なんだか誇らしい気持ちになります。
しかも、そのセリカ。なんと10万キロオーバー。
今なら「過走行車」と言われそうですが、当時の若者にとっては、「エンジンがかかれば勝ち」みたいな時代でした。
もちろんエアコンなど効きません。
夏は暑く、冬は寒い。
しかし、あの頃はそれでも楽しかった。
今の車は静かで速くて燃費も良い。
今の私の車はアイサイトまで付いている。
でも、なぜか昔の車には“機械の匂い”がありました。
そんな思い出もあって、トヨタのニュースを見ると、つい嬉しくなります。
日経平均も好調。
「なんだ、日本もまだまだやるじゃないか」
と思って記事の横を見ると、そこには別のニュースがありました。
韓国・サムスン電子がAIブームによる半導体需要の急増で、2028年には利益が40兆円規模になる可能性があるという話です。
利益です。売上ではありません。
トヨタの売上規模に迫る“利益”を、半導体メーカー1社が叩き出すかもしれない。
正直、ちょっと言葉を失いました。
同じ半導体なら、日本にもキオクシアがあります。
最近、株価が話題になっていて、
「日本勢も頑張っているな」
と思っていたのですが、サムスンの数字を見ると、やはり桁が違う。
また日本は、“儲かる場所”を取れなかったのか。
そんなことを考えてしまいました。
半導体は「安売り競争」の世界だった
昔、半導体というと、どちらかと言えば“地味な部品”でした。
性能は年々上がる。
しかし値段はどんどん下がる。
しかも競争が激しい。
だから昔のメモリメーカーは、「作っても儲からない」と言われることが多かった。
実際、日本の半導体メーカーも、DRAM競争で韓国や台湾勢との価格競争に巻き込まれ、苦しくなっていきました。
かつて世界を席巻した日本半導体。
NEC、東芝、日立、富士通。
「Japan as No.1」と呼ばれた時代です。
私が20歳頃、アメリカでベストセラーになったあの本を読んで、日本人として誇らしく感じた記憶があります。
当時の日本は、
- 半導体
- 家電
- 自動車
- 液晶
- 精密機械
何を作っても強かった。
ところが、その後の世界は大きく変わりました。
今のAI時代の中心にいるのは、
- NVIDIA(アメリカ)
- TSMC(台湾)
- Samsung(韓国)
- SK hynix(韓国)
です。
もちろん日本にも強みはあります。
半導体材料。
製造装置。
精密部品。
この分野では今でも日本企業は非常に重要です。
しかし、“利益を総取りする場所”は取れなかった。
それが今の現実です。
なぜメモリが突然「超重要」になったのか
昔のパソコンを知っている世代なら、「メモリ」と聞くと、少し懐かしい感じがします。
私がMS-DOSやWindows3.1の頃に使っていたパソコンでは、メモリ128KBとか、そんな世界でした。
今の若い人に言っても、「キロ?」と言われそうです。
しかも当時、そのメモリが高かった。
秋葉原の高架下へ行って、2万円を握りしめてメモリを買った記憶があります。
店員さんも独特でした。
「相性保証なしね」
と言われ、意味も分からず頷いて買う。
家に帰って認識しなければ、軽く絶望。
今思うと、あの頃のパソコン趣味は、
かなり修行に近かった気がします。
しかし、そのメモリが、今やAI時代の主役です。
ChatGPTのようなAI。
画像生成AI。
巨大データセンター。
これらは、とてつもない量のメモリを使います。
しかも、普通のメモリでは足りない。
高速で大量転送できる特殊メモリ、
HBM(高帯域メモリ)が必要になります。
そして、そのHBM分野で圧倒的に強いのが、
SamsungやSK hynixなのです。
つまり今、メモリは単なる部品ではありません。
AI時代の“石油”のような存在になってしまった。
だから市場も、「半導体は景気循環産業」ではなく、「AIインフラそのもの」として見るようになってきています。
日本は負けたのか?
では、日本はもう駄目なのでしょうか。
私は、そこまで単純ではないと思っています。
たとえば、TSMC熊本工場。
あれも結局、日本の材料や装置が重要だからこそ、日本に来たわけです。
半導体は、一社だけでは作れません。
材料。
装置。
薬品。
精密加工。
超純水。
あらゆる技術の集合体です。
つまり日本は、今でも“黒子”としては非常に強い。
ただ、どうしても思ってしまうのです。
「また、日本は下請け側なのか」と。
昔、日本は完成品で世界を席巻しました。
ウォークマン。
テレビ。
半導体。
自動車。
しかし今は、「重要部品では強い」という話が増えてきた。
もちろん、それも大事です。
でも、どうしても、最終的に莫大な利益を持っていくのは海外企業に見えてしまう。
そこに、日本人として少し悔しさがあります。
軽薄短小のその先へ
昔、日本は「軽薄短小」が得意と言われました。
軽く。
薄く。
短く。
小さく。
それが日本製造業の象徴でした。
ソニーのウォークマン。
シャープの液晶。
小型化競争の時代です。
しかし今の半導体は、さらにその先を行っています。
ナノメートル単位。
人間の感覚では理解できない世界です。
もはや“軽薄短小”どころではありません。
そして、その世界で、アジア各国が猛烈な勢いで伸びています。
台湾。
韓国。
中国。
気が付けば、日本は追う側になっていました。
もちろん、簡単に逆転できる話ではありません。
半導体工場は、一つ建てるだけで数兆円。
しかも、技術革新が速すぎる。
今日の最先端が、数年後には旧式になる。
そんな世界です。
それでも、日本企業には頑張ってほしい。
キオクシアにも。
ラピダスにも。
材料メーカーにも。
装置メーカーにも。
昔、秋葉原でメモリを買っていた世代としては、やはり“日本製”に期待してしまうのです。
なんとか、一矢報いてもらいたいものです。



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