― 骨盤骨折入院で思い知った「守られないお金」の話
高額療養費制度の仕組み
老後の医療費が心配
先日、テレビを見ていたら、
「老後で何が一番心配ですか?」という街頭インタビューをやっていました。
その中でよく聞かれたのが――
「医療費がかかるのが心配です」
という声です。
うーん……と、コーヒーを飲みながら考えました。
確かに、年を取ると病院に行く回数は増えます。
若いころは、年に一度の健康診断くらいで、注射といえばそれくらい。
ところが最近の私はというと――
・老人性黄斑変性症で、目玉に注射
・潜血便で大腸検査、鎮静剤を点滴注射
この年末年始だけで、ずいぶん「プスプス」やられました(笑)
まるで「人間ピンクッション」であります。
でもですね。
高額医療費制度の仕組み
医療費については、ちゃんとした制度があります。
簡単に言えば、
「一定額を超えた医療費は戻ってくる」
というありがたい制度です。
年金世帯の私の場合でいうと、入院しても年間 約57,600円を超えた分は戻るという感覚でした。
だから正直に思いました。
「そんなに医療費って怖いか?」
制度があるのに、なぜ皆さんそんなに不安なんだろう。
……と。
図:医療費100万円の場合の流れ
さらに重要な分岐(実務)
認定証があれば、最初から支払いは57,600円で済みます。
そして、2026年時点の一般的な目安(70歳未満・70歳以上で少し違います)
70歳未満(現役世代)
| 年収目安 | 区分 | 自己負担上限(月額) |
|---|---|---|
| 約1,160万円以上 | ア | 252,600円+(医療費−842,000円)×1% |
| 約770万〜1,160万円 | イ | 167,400円+(医療費−558,000円)×1% |
| 約370万〜770万円 | ウ | 80,100円+(医療費−267,000円)×1% |
| 〜約370万円 | エ | 57,600円 |
| 住民税非課税 | オ | 35,400円 |
70歳以上(年金世帯はこちらが重要)
| 区分 | 外来(個人) | 外来+入院(世帯) |
|---|---|---|
| 現役並み所得者 | 57,600円 | 80,100円+1% |
| 一般(年金世帯) | 18,000円 | 57,600円 |
| 低所得者Ⅱ | 8,000円 | 24,600円 |
| 低所得者Ⅰ | 8,000円 | 15,000円 |
そこで、ふと気づいたんです。
「いや、ちょっと待てよ」
「自分が一番よく知っているじゃないか」
そう、10年前のことを思い出しました。
骨盤骨折、そして突然の“2万円の部屋”
あれは今から10年前、趣味のサイクリング中のことです。
道路のデコボコにタイヤを取られて転倒。
動けず、呼ばれた救急車で運ばれたのは、なんと家から20km以上離れた大学病院でした。
CTスキャンの結果は――
骨盤骨折(左寛骨臼骨折)
しかも、医師から言われたのが、
「全治半年、ベッド生活2か月ですね」
……なかなかパンチの効いた宣告です。
さらに追い打ち。
「大部屋が空いてないんですよ」
「個室になります」
「差額ベッド代で1日2万円です」
……
いやいやいや。
ちょっと待ってください。
2万円 × 30日 × 2ヶ月 = 120万円
頭の中で電卓が弾け飛びました。
しかも、差額ベッドって、これ、
保険対象外(全額自己負担)です。
とはいえ、
「じゃあ、他の病院に行きます」
なんて言える状況でも立場でもありません。
骨盤骨折で動けない人間が、そんな交渉できるわけもなく。
はい、即決(というか強制)でした。
2万円の部屋で、できることは“ほぼゼロ”
さて、2万円の個室です。
病院の個室というと、
政治家が不祥事を起こした時に逃げ込むところ。という印象でした。
風呂あり、ソファあり、なかなか立派な部屋です。
……が。
私はベッドから一切動けません。

食事の時も頭側を15度以上起こすのは禁止
もちろん風呂もソファも無縁
ただただ天井を見る日々
1日2万円の部屋で「寝るだけ」
これはなかなか贅沢な拷問です。
最大の試練、それは排泄問題
さらに厳しかったのが――
排泄
小はなんとか尿瓶(シビン)で対応できます。
問題は大です。
オシメ
そして看護師さんに処理してもらう。
……これはですね、
プライドとかそういうレベルの話ではありません。
人間、ここまで戻るのか
と、妙に感心した記憶があります。
そして後で思いました。
これ、個室にシブシブ入ったけれど、もし大部屋だったらどうなっていた?
カーテンで仕切られているとはいえ、
- 音
- 匂い
- 看護師さんの出入り
周りの患者さんも、私も、かなりのストレスだったでしょう。
私の場合は、妻が別の病院を探してくれて、1週間で転院できました。
新しい病院では翌日から車椅子訓練で、看護師さん同行とはいえ、翌日から大は自分で処理できました。
結局、大学病院の1週間で2回、大は看護師さんに処理してもらっただけで済みました。
個室は“贅沢”ではなかった
その時、はっきり思いました。
個室は贅沢ではない
必要だった
テレビや世間ではよく
「差額ベッド、個室=贅沢でムダ」
と言われますが、
現実は違います。
状況によっては“必須”になる
制度が守ってくれるもの、守ってくれないもの
ここで話を戻します。
高額療養費制度は確かに優れた制度です。
医療費(治療費)は守られる
しかし、私が体験したのはこうです。
ある条件では入院生活は守られない。
具体的には:
- 差額ベッド代
- 入院中の生活環境
- 病院の空き状況
- 搬送先の選択不可
すべて自己責任(というか運)
だから「医療費が怖い」になる
テレビで皆さんが言っていた
「医療費が怖い」
これは正確に言うと
「制度でカバーされない医療費が怖い」
なんだと思います。
じゃあ、どう備えるか?
では結論です。
保険に入るか?
いろいろ考え方はあります。
少しの余裕資金を持っておくのが最善と考えます。
例えば:
- 数日〜1週間の個室
- 1日1万〜2万円
10万〜20万円程度
これだけでも
「最初の想定外」はかなり吸収できます。
しかし、さらに歳を重ねると、それさえも無理で寝たきりになる可能性は高くなります。
最後に
10年前の私は、
「医療費は制度で守られるから安心」と思っていました。
それは間違いではありません。
でも、足りませんでした。
守られるのは「治療費」だけ
生活と尊厳は守られない。
だから今はこう考えています。
医療費は怖くない。
でも、 “想定外の医療費”は怖い
これが、老後に必要なお金の正体かもしれません。
(コーヒーを飲みながら、そんなことを考えた一日でした)





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