- 築25年の中古住宅を買って、早くも4年
アラサーの我が家
コロナ禍の2022年、ゴールデンウィークのことです。 「2年後には定年退職。長かったサラリーマン生活を終えたら、夫婦2人でのんびり暮らそう」 そんなことを考えながら散歩していたとき、偶然見つけたのが築25年の中古住宅でした。
私たち夫婦が暮らすには少々広すぎるくらいの一戸建て。しかも、トイレは1階と2階にそれぞれあります。 これが実にありがたい。朝から妻にトイレを追い立てられることもなく、私専用のトイレで新聞を読もうがスマホを眺めようが自由です。年金生活者にとって、これほど贅沢な空間はありません(もっとも、長居しすぎると足がしびれますが)。
この家に引っ越した経緯やお金の話については、以前の記事「エピソード0 今までのお話」に書いています。
さて、購入時には築25年だった我が家も、それから4年が経過しました。つまり現在は築29年。家もいよいよアラサーです。人間なら働き盛りですが、木造住宅の29歳ともなるとあちらこちらに少々ガタが出始めます。人間も家も、年齢を重ねるとメンテナンスが必要になるようです。
リビングの床が「ギシギシ」と鳴り始めた
特に気になっていたのが、1階リビングのフローリングです。リビングに入って1.5mほど進んだ、テーブルの手前あたり。歩くたびに、 「ミシッ、ギシッ」 と音がするようになりました。
最初は小さな音だったので、あまり気にしていませんでした。しかし、昨年の冬あたりから寒い日には特に音が大きくなってきたのです。春になって暖かくなると、少し静かになったような気もします。
もっとも、私自身の耳が少しずつ遠くなっている可能性も否定できません。 「床が静かになったのか、私の耳が鈍感になったのか……」 なかなか難しい問題です。
ただ、床を踏むとほんのわずかに沈む感触があり、以前より広い範囲で音がするようになっていました。このままでは、これから寒くなるにつれて、またギシギシ音に悩まされそうです。毎日歩く場所ですから、結構なストレスになります。
床鳴り補修剤を試してみたが効果なし
実は以前、床鳴りを止めるための乳液状の補修剤を購入していました。フローリングの継ぎ目に液体を流し込み、床材同士の摩擦を軽減するというものです。床材には「実(さね)」と呼ばれる、板同士を組み合わせるための凹凸があります(下の構造図を参照)。この部分がこすれて音が出る場合、補修剤で改善することがあるそうです。
説明書に従って塗ってみましたが、残念ながら効果はありませんでした。
ほかにも、床に小さな穴を開けて接着剤などを注入する補修方法があります。しかし、我が家には大きな問題があります。リビングに温水式の床暖房が設置されているのです。
もっとも、引っ越してきたときには床暖房用のガス熱源機がすでに壊れていました。修理して使うつもりもなく、現在まで一度も使っていません。しかし、使っていなくても床下には温水配管が残っています。しかも中古住宅なので当時の施工図面がなく、配管がどこを通っているのかまったく分からないのです。
そんな床にドリルで穴を開け、万一、温水パイプを傷つけてしまったら……。 床鳴りを直すつもりが、床暖房の配管修理という大工事になりかねません。1,000円程度の修理で済ませたいのに、何十万円もの出費になったら笑い話にもなりません。
そこで、床の上から穴を開ける方法は諦めました。
床の構造を調べてみる
そもそも、木造住宅の床はどういう構造になっているのでしょうか。

上の図にあるように、一般的な木造住宅ではフローリング(床材)の下に合板などの下地があり、それを「根太(ねだ)」や「大引き(おおびき)」という木材で支えています。さらに、大引きを「床束(ゆかづか)」という支柱で支える構造になっています。
我が家の場合、根太と根太の間にはスタイロフォームという断熱材が入っていました。床暖房の温水配管は、その上の見えない部分に設置されている可能性があります。
そこで考えたのが、床を上から修理するのではなく、「下から支えてやる方法」です。 床束を追加して大引きのわずかな動きを抑えれば、床鳴りが止まるかもしれません。もちろん、原因がフローリングそのものにあれば効果は期待できませんが、試してみる価値はありそうです。
親父の形見の作業服で床下へ潜入
いよいよ床下調査です。
まず、汚れても構わない古い脛に穴の開いたジーンズに着替えます。上着は、昔大工をしていた親父の形見である工務店の作業服。親父が使っていた作業服を着て、息子が築29年の家を修理する――。なんとなく、親父に見守られているような気がします(もっとも、親父が見ていたら「そんなことも分からんのか!」と怒られそうですが)。
LEDライトを用意し、キッチンの床下収納に入っている荷物を全部取り出します。収納庫を外すと、そこが床下への入り口です。
いざ、潜入!
築29年の家の床下。当然ながら、あまり気持ちの良い場所ではありません。蜘蛛の巣があり、何だか分からない虫の死骸らしきものもあります。LEDライトで照らすと、普段は見たくもないものまで、はっきり見えてしまいます。
できれば見なかったことにしたい。しかし、ここまで来た以上、引き返すわけにはいきません。
床下を這いながら、リビングの床鳴りがする場所の真下まで移動しました。そこで妻にお願いして、問題の場所を何度か踏んでもらいます。
「ギシッ、ギシッ」
床下からでも、はっきり聞こえます。 注意して見ていると、床を踏むたびに大引きや根太のあたりが、ごくわずかに動いているように感じます。
「これが原因かもしれない」
一か八か、鋼製束で支えてみよう
床下から大引きまでの高さを測ると、およそ45cm。幸い、我が家の床下は全面にコンクリートが打たれています(ベタ基礎)。そのため、鋼製束を支えるための束石(つかいし)を新たに置く必要はなさそうです。
そこでホームセンターへ向かい、高さ調整ができる鋼製束を購入しました。念のため2本。
お値段は、なんと…… 2本で1,196円(税込)!
これで直れば、ずいぶん安いものです。もし直らなければ、専門の大工さんに相談するしかありません。あるいは、床鳴りが聞こえないふりをして生活するか。いっそのこと、近い将来、私の耳がもっと遠くなってギシギシ音が聞こえなくなるのを待つか……(ただし、最後の方法は床鳴りより深刻な問題が発生しそうですが)。
鋼製束2本を設置してみた
買ってきた鋼製束を握りしめ、再び床下へ。
今回購入したのは、上部がL字型になっている鋼製束です。大引きの下に当て、高さを調整して支えることができます。
床暖房の配管はどこにあるのか分からないため、スタイロフォームや床板には直接触れず、構造材である大引きの下から支えることにしました。
スパナを使って、鋼製束の高さを少しずつ調整します。 ギリギリ、ギリギリ……。
大引きに当たったところから、慎重に力を加えます。床を無理に持ち上げてしまっては、別の場所に不具合が出るかもしれません。実際にどれだけ動いたのかは分かりませんが、感覚としては数ミリ程度でしょうか。ほんのわずかに支えを強くしただけです。
2本の鋼製束を設置したところで、妻にもう一度、床を踏んでもらいます。
すると……
おおっ! さっきまでのギシギシ音が、かなり小さくなっています。これはいけるかもしれません!
さらに確認してもらうと、壁に近い場所だけまだ少し音が残っていました。そこで、その側の鋼製束をもう少しだけ調整します。
そして、再び妻に踏んでもらうと……
シーン。
音がしません。もう一度踏んでもらいます。やはり音がしません。
妻の体重が軽いから音がしない、ということは決してないはずです。……いや、ここは余計なことを言わない方が家庭の平和のためでしょう。
ともかく、成功です!

最後に鋼製束の状態を確認し、調整ナットをしっかり固定。意気揚々と床下から這い出しました。
作業時間15分、材料費1,196円で解決!
床下収納を元に戻し、荷物を片付けて作業終了です。
床下への出入りや調査、ホームセンターへの買い物を除けば、鋼製束の設置作業そのものは15分ほどでした。かかった材料費は、税込1,196円。長い間気になっていた床鳴りが、これだけで解消したのです。
もっとも、実際に床鳴りの原因がどこにあったのか、完全に分かったわけではありません。床材の実(さね)の部分に問題があったのかもしれませんし、大引きや下地のわずかな動きが影響していたのかもしれません。ただ、下から支えたことで音が消えたのは事実です。
今後も、鋼製束が緩んでいないか、床が再び沈んだり鳴ったりしないか、しばらく様子を見るつもりです。
※なお、床下の構造や床暖房の配管位置は住宅によって異なります。鋼製束も、設置場所の強度や固定方法を確認する必要があります。今回の方法がすべての住宅に使えるわけではありませんが、我が家では大成功でした。
年金生活者のDIYは、安く直せたときが一番うれしい
定年退職してから、時間には余裕ができました。しかし、お金には無限の余裕があるわけではありません。だからこそ、自分でできることはなるべく自分でやってみたいのです。
もちろん、専門家に頼まなければ危険な工事まで無理をするつもりはありません。今回は床下に潜って原因を調べ、構造を確認し、比較的簡単な補修で解決できました。
大工さんを呼ぶこともなく。 床を剥がすこともなく。 床暖房の配管に穴を開けることもなく。 そして何より、耳が遠くなるのを待つ必要もなく!
わずか1,196円で、静かなリビングが戻ってきました。これでまた、夫婦2人でのんびり暮らせそうです。
ただし、床下で蜘蛛の巣と格闘してきた作業服は、妻から「洗濯機に入れる前に外でよく払いなさい!」と命じられました。
床の修理は終わりましたが、家庭内の指揮命令系統は定年退職後もまったく変わっていないようです。


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