- でも現実の年金生活者はどうなのか?
SNSとかを見ていると皆がFIREしているように見える
最近、寝る前に5ちゃんねるや投資系SNSを見るのが日課になっています。
もちろん投資の勉強にもなりますし、世の中の雰囲気も分かります。ところが、見れば見るほど不思議な気持ちになってきます。
なぜか。そこにいる人たちが、みんなお金持ちに見えるからです。
- 「40歳でFIRE達成しました」
- 「資産1億円突破!」
- 「配当収入だけで生活しています」
- 「新NISAは夫婦で満額1800万円投資済み」
- 「今年の含み益だけで年収を超えました」
こんな話が次々と出てきます。最初の頃は「すごい人がいるものだなあ」と感心して読んでいました。ところが毎日見ていると、だんだん感覚が狂ってきます。
「あれ? ひょっとして日本人はみんなFIREしているのでは?」 「私のNISA500万円なんて少なすぎるのでは?」
そんな気分になってくるのです。しかし、冷静に考えると、それはかなり危険な勘違いでした。
日本にFIRE達成者は何人いるのか?
実は、日本にはFIRE達成者数の公式統計はありません。総務省も厚生労働省も「あなたはFIREしていますか?」なんて調査はしていません。そのため、世の中に出ている数字は民間調査や推計になります。
ある個人系のFIRE分析記事では、「日本のFIRE達成者は生産年齢人口の約0.5%程度ではないか」と推計されていました。
生産年齢人口を約7400万人とすると、約37万人。日本の人口が1億2000万人以上いることを考えると、たったの0.3%程度です。300人に1人もいません。
これが本当なら、私が近所のスーパーへ行ってもFIRE達成者に会わないのは当然です。むしろ会えたら珍しい、天然記念物クラスです。
なのにネットでは半分くらいFIREしているように見える
ではなぜ、5ちゃんねるを見ているとFIRE達成者ばかりに見えるのでしょうか。理由は簡単です。FIREした人ほど書き込みたくなるからです。
考えてみれば当たり前ですよね。宝くじで1等が当たった人は自慢したくなりますが、外れた人は黙っています。

投資も同じです。「資産1億円達成!」「FIRE成功!」という人は書き込みます。しかし、「今月も年金が振り込まれました」「固定資産税払いました」「国保の請求書が来ました」という人は、投資板にはあまり現れません。
つまり私たちは、「成功した人の声だけ」を聞いているのです。これを難しい言葉で「生存者バイアス」と呼びます。私はこれをもっと分かりやすく、「FIRE村現象」と呼びたいと思います。
村の中にはFIREした人しか住んでいないので、外から来た人は「日本人の半分はFIREしている」と勘違いしてしまうのです。
しかし、FIREに憧れている人は多い
一方で、FIREを実現した人は少ないものの、憧れている人はかなり多いようです。リスクモンスター社の調査やマイナビの記事によると、「FIREしたい、または実現した」と答えた人が約34%。実に3人に1人です。
特に若い世代ほどその傾向が強く、20代では約37%、30代では約39%がFIRE志向だそうです。
私が若い頃は「定年まで働く」という人生設計が当たり前でした。会社で43年働いた私から見ると、「給料をもらいながら人生経験が積めるのに、そんなに急いで辞めなくてもいいのに」と思う部分もあります。
しかし今の若い人たちからすると、満員電車も嫌、転勤も嫌、上司との付き合いも嫌。できれば自由になりたい、という気持ちも分からなくはありません。
私は43年働いたが当然FIREはしなかった(できなかった)
私は22歳で社会人になり、65歳まで働きました。途中で転職も何度か経験し、システム開発会社の営業として長年働き、気が付けば43年間。終わってみれば意外とあっという間でした。
今では年金を受け取りながら暮らしています。だからといって、「早くFIREすればよかった」とは思いません。
会社員時代には会社員時代の楽しさがありました。お客様との付き合い、トラブル、嫌な上司、良い上司。全部含めて人生だったと思っています。
私のNISA500万円は少ないのか?
実は、今回この記事を書こうと思ったきっかけはここです。
私のNISA残高は約500万円。5ちゃんねるを見ると、1000万円、2000万円、3000万円……そんな数字が並びます。すると、「500万円なんて仲間じゃないよ」と相手にされないように感じてしまいます。
しかし、現実に戻って考えると、60代で投資をしていない人もたくさんいます。NISA口座すら持っていない人も、預金中心の人もいます。
そう考えると、比較対象が間違っているのです。私はFIRE競争に参加しているわけではありません。年金生活者です。比較するなら、同じ年金生活者でしょう。そうすると見え方が全く変わります。
FIREと年金生活は目的が違う
ここが一番大きな違いです。FIREの人は、「資産を減らさずに生きる」「資産収入だけで生活する」という考え方が中心です。
一方で私は違います。私には公的年金があります。さらに個人年金もあり、S&P500もあります。だから、資産を増やし続ける必要はありません。むしろ、「何歳まで使えるか」「どのくらい上手に取り崩せるか」のほうが重要です。
私は以前から、80代前半くらいで資産を使い切るイメージを持っています。莫大な遺産を残す必要もありません。だから「死ぬ時が資産最大」ではなく、「生きている間に有効活用する」という考え方になります。
これはFIREとは似ているようで、全く違う世界です。
現実の年金生活者の悩み
実際の年金生活者の会話はもっと現実的です。
「今月は固定資産税が来た」 「自動車税も来た」 「国保はいくらになるんだろう」 「ガソリンもキャベツも高いな」
こんな話です。5ちゃんねるでは「資産1億円で配当生活」という話が飛び交っていますが、現実世界では「今日は卵が安かった」という話のほうがよく聞きます。
どちらが正しいという話ではありません。ただ、人数で言えば後者のほうが圧倒的多数でしょう。
まとめ:私はFIREしていないが、それなりに満足している
5ちゃんねるを見ていると、日本中がFIRE達成者だらけに見えます。しかし実際には、FIRE達成者は人口の0.3%程度という推計もあります。300人に1人以下です。
一方で、働き、定年を迎え、年金を受け取り、貯蓄や投資を少しずつ使いながら暮らしている人は数え切れません。私もその一人です。
資産1億円はありませんし、配当だけで生活はできません。偶数月の年金支給日を楽しみにしていますし、固定資産税の請求書を見るとため息が出ます。国保の通知が来ると少し緊張します。
しかし、たまに夫婦で旅行に行き、必要に応じてS&P500を取り崩して生活しています。考えてみれば、それもなかなか悪くない人生です。
今日も5ちゃんねるでは、誰かが「資産3億円達成!」と書き込んでいるかもしれません。そして私は、その書き込みを眺めながら、スーパーの特売チラシを見て「今日はキャベツが安いな」と喜んでいます。
どうやら私はFIREしていませんが、それなりに幸せな年金生活者のようです。
参考資料


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