食品消費税を2年間だけ1%に?

- 「私が責任を持って8%に戻す」と言われても信用できない

政府介入があっても今月は偶数月

急激に進んでいた円安が少し巻き戻されました。 私はS&P500の投資信託を保有しており、現在は奇数月に10万円ずつ取り崩しています。

円安になれば、ドル建てのS&P500が同じ価格でも、円換算した評価額は増えます。逆に円高になると、S&P500が上昇していても、円換算では評価額が減ることがあります。

そのため、円高になったとき、 「今月が取り崩し月だったら、少し損をした気分になったかもしれない」 と思いました。

しかし幸い、今月は偶数月。 私の計画では取り崩しを行わない月です。 次の取り崩しは9月なので、それまでにはまた円安が進んでいるかもしれません。ひょっとすると、1ドル165円くらいになっている可能性もあります。そうなれば、S&P500を円に換えて取り崩す私にとっては、為替面での実害は少なそうです。

いくら円高になっても私の取り崩し予定日までに元の円安へ戻っていれば、個人的には都合がよい。ずいぶん自分勝手な話ですが、投資資産だけを見ればそうなります。

食品消費税を1%に引き下げる話

しかし、生活者として考えると話は正反対です。 円安が進めば、輸入食品、飼料、肥料、燃料、電気代、包装資材、物流費などが上がります。

S&P500を10万円取り崩して為替差益に喜んでも、その分をスーパーや電気代で持っていかれては意味がありません。 右のポケットに円安の利益が入り、左のポケットから物価高でお金が出ていく。しかも左のポケットには穴が開いている。 年金生活者にとって、円安は決して喜ばしいことではありません。

そんななかで出てきたのが、食品の消費税を2年間だけ1%にするという案です。 現在、食品には軽減税率として8%の消費税がかかっています。これを1%まで引き下げる。 一見すると、物価高に苦しむ国民にとってありがたい政策に見えます。 しかし、内容を考えれば考えるほど、私は腹が立ってきました。

すでに上がった食品価格を少し戻すだけ

食品の消費税率が8%から1%になれば、税率は7ポイント下がります。 ただし、店頭価格が7%安くなるわけではありません。

税抜き100円の商品は、現在なら税込108円です。 税率が1%になれば税込101円なので、7円安くなります。 108円から101円への値下がり率は、7%ではなく、(108-101)÷ 108 で約6.5%です。

もちろん、6.5%下がれば助かります。 しかし、ここ数年で食品価格はそれ以上に上がっています。100円だった商品が120円、150円になり、内容量まで減っている(ステルス値上げ)ことも珍しくありません。そこから6.5%程度安くなったところで、以前の価格に戻るわけではないのです。

しかも、減税分がすべて販売価格へ反映される保証もありません。 これまで企業は、原材料費、人件費、物流費、電気代の値上がりを限界まで吸収しようと努力してきました。限界を超えた分が値上げに繋がっています。そのため、企業は今回の減税分を「値下がり」ではなく「これ以上の値上げを抑えるためのコスト吸収」に使う可能性があります。

消費税は下がったのに、値札はほとんど変わらない。 政府は「7ポイントの大減税を実施しました」と胸を張る。 国民はスーパーの値札を見て、「あれ、思ったほど安くなっていない」と首をかしげる。 それでも国の税収からは、毎年4兆円規模のお金が消えていきます。 これほど費用対効果の分かりにくい政策もありません。

なぜ今すぐではなく、来年からなのか

物価高で困っているのは「今」です。 しかし、食品消費税の引き下げが実施されるのはすぐではありません。 実施までに時間がかかれば、その間にも円安や原材料高によって食品価格がさらに上がる可能性があります。

仮に現在108円の商品が、減税実施までに税抜き110円へ値上がりしたとします。 消費税率が1%になっても、税込価格は約111円です。 消費税は大幅に下がったのに、現在の108円より高くなっています。

政府は「減税しなければ、もっと高くなっていました」と説明するでしょう。 理屈としては間違っていません。 しかし国民からすれば、7ポイントも減税したのに以前より高いままです。 燃え広がる火事に、数兆円する高級バケツで水を少しかけるようなものです。しかも、火元である円安や輸入物価の上昇が止まっていなければ、またすぐに燃え広がります。

最大の問題は2年後の「8%復帰」

私が最も問題だと思うのは、減税そのものより「2年後」です。 食品の消費税率を1%にしたあと、2年後には8%へ戻すとされています。

税抜き100円の商品なら、税込101円から108円へ戻ります。 消費者が支払う金額は、(108-101)÷ 101 で約6.9%上がります。

政府は「増税ではありません。元の税率へ戻すだけです」と言うでしょう。 しかし、国民にとっては同じことです。レジで支払う金額が増えれば、実質的には値上げです。 米も、パンも、牛乳も、肉も、魚も、冷凍食品も、調味料も、一斉に約7%上がる。 そんなことを本当に実行できるのでしょうか。

2年後も物価高が続いていれば、必ず「国民生活を守るため、減税を延長すべきだ」という声が出ます。 野党だけではありません。選挙を控えた与党議員からも8%復帰に反対する声が出るでしょう。

テレビでは、スーパーで買い物をしている人にマイクを向けます。 「食品の消費税が8%に戻ることについて、どう思いますか」 聞かれた人は、当然こう答えます。 「困ります」「生活できません」「政治家は庶民の生活が分かっていません」

その映像が毎日流れるなかで、食品の税率を8%へ戻せる政治家がどれだけいるのでしょう。 おそらく延長されます。さらに2年延長する。そのうち、事実上の恒久減税になる。

しかし、恒久的に続ける財源はありません。 そこで赤字国債を増やすか、別の税金を上げるか、社会保障費を削ることになります。

食品の消費税を下げる代わりに、国民健康保険料や介護保険料が上がったのでは、年金生活者にとって意味がありません。 スーパーで月3,000円助かって、介護保険料が月4,000円上がる。 買い物袋を片手に喜んで帰宅したら、郵便受けに保険料の値上げ通知が入っていた――という笑えない話になります。

「私が責任を持って戻す」と言われても

総理は「2年後に責任を持って8%へ戻す」という趣旨の発言をしています。 しかし、政治家の言う「責任を持つ」とは、いったい何なのでしょう。

8%へ戻せなかった場合、総理が私財で年間4兆円の不足分を恒久的に払ってくれるのでしょうか。 もちろん、そんなことはありません。せいぜい記者会見で「結果として国民の理解を得られなかったことは、私の責任です」と頭を下げる程度でしょう。場合によっては総理を辞任するかもしれません。

しかし、総理が辞めても、失われた税収は戻ってきません。 国の借金も消えません。社会保障の財源も増えません。

食品消費税を2年1%にして2年後に戻す

さらに、8%へ戻すのは数年先です。 そのとき、今の総理が在任している保証はありません。支持率が下がって退陣しているかもしれないし、選挙で政権が代わっているかもしれない。政治家を引退している可能性もあります。

そのころ新しい総理が、「前政権が決めた政策ですが、現在の物価状況を踏まえ延長します」と言えばそれで終わりです。 約束した本人はもういない。それでも財源不足という請求書だけは、国民に残ります。

家計に例えれば、 「2年間だけ収入を減らすけれど、その後は必ず元に戻す。私が責任を持つ」 と言って、家族の貯金を使い始めるようなものです。 しかし2年後、その人は家を出ている。残された家族が、減った貯金と増えた支出を見ながら今後の生活を考えることになります。

これで責任を取ったと言えるのでしょうか。 責任を取って私財で毎年4兆円払ってくれるなら、少しは信用できます。もちろん、払えるはずはありませんが。

減税という言葉だけで喜んではいけない

私も税金は安い方がよいと思います。食品の消費税が下がれば、家計が助かることも間違いありません。 しかし、政策は「減税」という聞こえのよい言葉だけで判断すべきではありません。

  • 失われる税収を何で補うのか
  • 2年後に物価高が続いていても、本当に8%へ戻すのか
  • 戻せなかった場合、どの予算を削るのか
  • 延長するなら、恒久財源をどうするのか

そこまで示して、初めて「政策」と呼べるのではないでしょうか。

今の説明は、「とりあえず2年間だけ安くします。あとのことは私が責任を持ちます」というものです。 しかし必要なのは、総理の決意ではありません。数字と財源と、実行可能な出口です。

私はS&P500を保有しているため、9月に円安が進んでいれば、取り崩し額の面では助かるかもしれません。 しかし、その円安で食品や電気代が上がり、政府が財源のない減税で一時的に値札を下げ、2年後にまた税率を戻す。 これでは、政策が物価高を追いかけて右往左往しているだけです。

為替介入で円を買い、食品減税で税収を減らし、足りなければ国債を増やす。 そのたびに政府は「責任を持つ」と言います。 しかし、最後に請求書を受け取るのは、いつも国民です。

年金生活者として望むのは、2年間だけレジの金額が少し安くなることではありません。 円安と物価高が落ち着き、数年後も安心して食品を買えることです。

「できなかったら辞任する」という責任ではなく、最初から辞任しなくても済む、持続可能な政策を考えてほしいと思います。

※本記事は、筆者自身の経験や調査に基づく情報提供を目的として作成しています。
 投資には価格変動などのリスクがあり、元本割れとなる可能性があります。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行ってください。
 年金制度、健康保険制度、保険料、税金等の取り扱いは、法改正やお住まいの自治体、年齢、所得、家族構成などによって異なる場合があります。最新の情報は、年金事務所、自治体、税務署等の窓口でご確認ください。
 本記事は、投資助言、税務相談、保険加入等を推奨するものではありません。
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