- 消費税減税だけでは世の中はうまく回らない
ここからはSF(空想話)です
ここまで3回にわたり、食品消費税を8%から1%へ下げる構想について考えてきました。
そして最後の第4弾。今回考えたいのは、 「もし2年後、政治的にも家計的にも8%へ戻せなくなったら、その減税の穴(減収分)は誰が埋めるのか?」 という話です。
あらかじめお断りしておきます。 後半には、かなり極端な話が出てきます。
- ビール1本 1,000円
- たばこ1箱 5,000円
- 医療費の自己負担 50%
もちろん、こんな政策が決まっているわけではありません。 今回は、「財源がないのに支出だけ維持しようとしたら、最後はこんな恐ろしい世界になるかもしれない」という、ちょっとブラックな年金生活者のSF(空想話)です。
できれば、絶対にSFのままで終わってほしい話なのですが――。
原油が上がってもガソリンが170円台で済む理由
現在、中東情勢やホルムズ海峡をめぐる緊張などから、原油価格は再び1バレル100ドルを超える水準となっています。海外ではガソリンや軽油価格が大きく値上がりしています。
では、なぜ日本国内のガソリン価格は170円程度に抑えられているのでしょうか。
それは、政府がガソリンの全国平均価格が170円程度を超えた分を、石油元売り会社へ補助金として支給しているからです。 車に乗る私としては、本当に「ありがたい」限りです。もしガソリンが1リットル250円や300円になったら、ドライブ好きの年金生活者としては笑っていられません。
しかし当然ながら、その補助金は空から降ってくるわけではありません。 車に乗る人だけが作った特別な財布から出ているわけでもなく、広く国民が納めた税金や国の財源(借金含む)から出されています。つまり、車に乗らない人も含めて社会全体で負担しているのです。
補助金を増しても、道路や医療費は減らせない
ここに、国の財政の恐ろしい難しさがあります。
「ガソリンが高いから補助金を出します」と支出を増やすことはできます。 しかし、「その代わり道路の穴補修はやめます」「トンネルの点検は打ち切ります」とはいきません。災害が起きれば復旧工事も必要ですし、警察や消防、学校の予算も必要です。
そして何より大きいのが「社会保障費」です。 2026年度の社会保障給付費は、予算ベースで144兆円を超える巨大な規模に膨らんでいます。 高齢化が進んでいるからといって、「今年は予算がないので医療や介護を我慢してください」なんて言えるはずがありません。
国の支出というのは、一度始めたら簡単に止められないものばかりなのです。
そこへやってくる「食品消費税の減税」
そこへ登場するのが、「2027年4月から2年間、食品消費税を1%(給付と合わせて実質ゼロ)にする」という減税案です。
家計には非常にありがたい話です。私も第1弾で「高齢夫婦なら年間約5万円助かる」と計算しました。
しかし国から見れば、当然ながら「年間数兆円規模の巨大な税収の穴」が開きます。 そして第3弾で書いた通り、物価上がりのなかで「2年後にすんなり8%へ戻す」のは政治的に超難問です。
もし、8%に戻せなかったらどうなるか?
収入(税収)が減ったのに、支出(医療や道路)は減らせない。家庭なら「今月は旅行を諦めよう」「コーヒー豆を安いものにしよう」と節約できますが、国はそうはいきません。
削れないなら、どこかから取るしかない。 ここから、私の「SF(ディストピア)」が始まります。
【年金生活者のSF①】酒税とタバコ税を爆上げする?
まずは、お酒。 「酒は生活必需品じゃないでしょう」と言われれば、返す言葉もありません。
- 缶ビール1本: 1,000円
酒好きの私としては「それだけは勘弁してくれ!」と叫びたいところですが、「嗜好品なら増税しても国民の理解を得やすい」という理屈は通りやすいものです。家庭内議会に持ち込んでも、妻から「あなたは飲まなくても困らないでしょ」と一蹴されて否決されるのが目に見えています。
次は、タバコ。 私は20年以上前に禁煙したので困りませんが、健康増進という大義名分を掲げて――
- タバコ20本入り1箱: 5,000円
愛煙家の方から「ふざけるな!」と怒られそうですが、政治的には説明がつきやすいターゲットです。 ……とはいえ、酒とタバコをどれだけ絞り上げても、数兆円という巨大な減税の穴を埋めるには全く足りません。
次に向かう先はひとつです。
【年金生活者のSF②】医療費と社会保険料を直撃する?
「食品を安くして健康的になったのだから、医療費の負担を増やしましょう」
- 病院の窓口負担: 一律 50%
- 国民健康保険料: 30%アップ
- 介護保険料: 30%アップ
……年金生活者としては、まったく笑えないブラックジョークです。
しかし、これは完全な空想とも言い切れません。 現実の2026〜2027年度を見ても、後期高齢者医療制度の全国平均保険料は年間約8万9,000円から約9万6,000円(約7.8%増)へ引き上げられる見通しです。
「消費税を減らしたから社会保険料を上げる」と明言されることはないでしょう。 しかし、もともと社会保障費の増加で保険料に強い上昇圧力がかかっている中、税収減まで重なれば、巡り巡って「保険料値上げ」や「自己負担増」という形で跳ね返ってくるリスクは十分にあります。
【年金生活者のSF③】所得税・国債・そして年金の削減?
それでも足りなければ、どうするか。
- 所得税・住民税の引き上げ
- 赤字国債の追加発行(将来世代へのツケ回し)
- 年金給付額の引き下げ
「働いていない高齢者にこんなに払う必要があるのか」なんて言われたら、長年保険料を納めてきた身として猛反発します。年金はお小遣いではありません。 しかし、国の財布が本当にパンクしそうになれば、あらゆる給付が見直しの対象になり得ます。
税金、医療、介護、年金――。 これらはすべて「同じ国の財布」から出ているのですから。
減税は「入り口」ではなく「出口とセット」で評価したい
ここまで書いて、「お前は食品減税に反対なのか?」と思われるかもしれません。 決してそうではありません。食費が安くなるのは、年金暮らしにとって本当に助かります。
私が言いたいのは、「安くします」という入り口だけでなく、「減税した後の出口の設計」まで見届けないと本当の損得は分からないということです。
- 2年間限定なら、その間の財源はどうするのか?
- 2年後に8%へ戻すなら、その時の強烈な物価ショックにどう耐えるのか?
- もし戻せないなら、開いた数兆円の穴をどこで埋めるのか?
ここまでのセットがあって、初めて「実効性のある政策」と言えます。 ただ「安くします!」と拍手喝采を浴びて、後からこっそり「保険料値上げ」や「サービス削減」という別の請求書が届くのだけは御免です。
70歳になった私が笑えていられますように
減税が終わる2年後、私はほぼ70歳です。
スーパーに行けば物価が高い。ガソリン補助は終わった。国保も介護保険料も上がった。病院に行けば自己負担が増えている。年金は増えない。 ……そしてテレビでその時の総理大臣が、「財政健全化のため、国民の皆様に痛みを分かち合っていただきます」と頭を下げている。

そんな日本にはなってほしくありません。
全4回にわたって食品消費税について考えてきましたが、たどり着いた結論は、
「減税はありがたい。でも、その穴埋めを誰がどんな形で負担するのかが決まって、初めて安心して喜べる」
という結果でした。
70歳になった私が、美味しいコーヒー(と適正価格のビール)を飲みながら、 「あの時の食品消費税1%、いろいろ心配したけれど本当に良い政策だったね」 と笑っていられる未来であることを、切に願っています。
(とりあえず、ビール1本1,000円だけは本当に勘弁してください!)


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