- 預金か運用か? 前回の話の続きです
前回は預金も運用も両方必要というお話でした
先日、テレビで「預金か運用か」という特集をしていたのをきっかけにブログを書きました。 私の考えは、預金か運用かの二者択一ではなく、「預金も運用も、どちらも必要」というものです。
もちろん我が家にも銀行預金はあります。 投資信託ばかりで、明日の食費まで株価次第…というような生活をしているわけではありません。スーパーのレジで「本日のS&P500が下落しましたので、お支払いは明日にしてください」なんて言えるはずもありませんからね。
生活費や急な出費に備えるお金は、いつでも引き出せる預金として確保しています。 一方で、預金だけでは物価上昇(インフレ)に負けてしまう可能性がある。だからこそ、余裕資金の一部を投資信託で運用しているわけです。
では、その運用が実際にどうなっているのか。 今回は2026年の年初から10月初旬までの株価と為替の推移をグラフにしてみました。これが、なかなか興味深い結果になっています。
2026年の日経平均は、ちょっと尋常ではない

このグラフは、2026年初の値を「100」として、その後の変化を指数で表したものです。 比較しているのは次の4つです。
- 日経平均株価
- S&P500(ドル建て)
- S&P500(円建て)
- ドル円為替レート
同じ「100」からスタートさせると、どれがどの程度上がったのかが一目で分かります。 そして、グラフを見て最初に驚くのが日経平均の上昇ぶりです。
10月初旬の時点で、日経平均はおよそ「140」。つまり年初から約40%も上昇している計算です。 株式市場の世界では、年間10%の上昇でも十分に好調と言えるでしょう。それが年末を待たずに40%です。
もし今年の年初に100万円で日経平均連動の投資信託を買っていたら、現在の評価額は約140万円。わずか9か月余りで40万円の含み益です(※税金や信託報酬などを考慮しない単純計算ですが)。
銀行の普通預金に100万円を預けて9か月後に40万円の利息がついたら、「銀行員が何か重大な間違いをしたのでは…」と心配になりますよね。それくらい凄まじい上昇です。
ただし、忘れてはいけないことがあります。40万円の含み益は、まだ確定した利益(確定益)ではありません。 明日も140万円の価値が保たれているとは限らないのが、株式投資の世界です。
私のS&P500も15%上がっています
一方、私が保有しているのは米国株式の「S&P500」に連動する投資信託です。現在も定期的に取り崩しながら運用を続けています。
今回のグラフでは、S&P500の円建て指数が約115になっています。つまり、年初から約15%の上昇です。 日経平均の40%と比べれば随分控えめに見えますし、今年に限れば日本株に投資した人の方が大きな利益を得ていることになります。
だからといって、私は今から日経平均に乗り換えようとは思いません。 理由は簡単で、「今年よく上がったものが、来年もよく上がるとは限らないから」です。
過去の上昇率だけを見て投資先を変えていたら、「上がったところで買い、下がったところで売る」を繰り返しかねません。そんな忙しないことをするために年金生活者になったわけではありませんからね。
それに、私がS&P500を選んだのには、それなりの考え(米国の主要企業500社へ分散投資できることや、長期的な成長性への期待など)があります。
もちろん、米国経済がいつまでも好調とは限りません。円高が進めば、ドル建てで株価が上がっていても、円建ての評価額が下がることもあります。実際、今年に関しても為替の影響でドル建てと円建ての成績に差が出る場面がありました。
そうしたリスクを承知のうえで、今のところ私はS&P500を保有し続けています。
取り崩しているのに、お金がなかなか減らない
以前のブログで、「私の投資信託が今後どのように減っていくか」を試算したグラフをご紹介しました。一定の利回りで運用を続けながら、定期的に生活費として取り崩していくシミュレーションです。
そのときは年間10%程度の運用益が得られるケースも想定していましたが、これはあくまで計算上の仮定です。
ところが、今年のように想定以上に運用成績が良いと、資産がなかなか減りません。むしろ「取り崩しているのに評価額が増えている」ということさえ起こります。年金生活者にとっては実にありがたい話です。
私は投資信託を子孫に残すために運用しているわけではありません(そもそも我が家には子供がいません)。自分たちの老後生活を少し豊かにするためのお金です。そのため、以前から「82歳頃に運用資産を使い切る」くらいの計画を取り崩しの目安にしていました。
しかし、この好調な運用が続けば、計算上は82歳になっても資産がしっかり残っているかもしれません。 もっとも、これは相場が良い前提の話ですから、株価が大きく下落すれば状況は一変します。それでも「資産が想定以上に長持ちする可能性が出てきた」ことは素直に喜んで良いと思っています。
それなら、取り崩し額を増やせばよいのでは?
「せっかく資産が増えているのだから、もっと使えばいいじゃないか」という考えも当然出てきます。旅行の回数を増やしたり、少し贅沢な食事を楽しんだりしても罰は当たりません。
しかし、私は今のところ取り崩し額を増やすつもりはありません。
現在の基本計画は「2か月に10万円(月平均5万円)」の取り崩しです(株価や為替の状況によっては見送ることもあります)。
なぜ増やさないのか。理由の一つは、「これから先、何にお金が必要になるか分からないから」です。 年齢を重ねれば医療費や介護費が増えるかもしれませんし、自宅の修繕や家電の買い替えなど思いがけない出費もあるでしょう。
そして、もう一つの大きな理由がインフレ(物価上昇)です。
今は毎月5万円の取り崩しで十分だとしても、10年後・20年後に同じ5万円で同じ生活ができるとは限りません。 仮に物価が毎年2%ずつ上がった場合、現在の5万円と同じ買い物をしようとすると、10年後には約6万1,000円、20年後には約7万4,000円が必要になります。
お金の「額面」は同じでも、買える「モノの価値」は目減りしていきます。 だからこそ、運用が好調な今のうちに将来のための余力を残しておきたいのです。
株価が上がったからといってすぐに生活水準を引き上げていたら、株価が下がったときに困ってしまいます。「上がったときは喜び、下がったときは我慢する」。これくらいのおおらかな姿勢が、年金生活者にはちょうどよいのかもしれません。
投資で「ウハウハ」の人、「ヒヤヒヤ」の人
今年から投資を始めて日経平均の投資信託を買った方は、今のところ「ウハウハ」でしょう。通帳の残高ではなく、証券口座の評価額を眺めるのが毎日の楽しみになっているかもしれません。
一方で、話題の個別株を高値で買ってしまった方はどうでしょうか。 上昇している間は毎日が楽しくて仕方ありませんが、下がり始めた途端、スマートフォンで口座を開くことすら怖くなります。昨日までウキウキしていた人が、今日はヒヤヒヤ……。株式市場とは、本当に人間の感情を揺さぶる場所です。
また、「金の価格が上がっている」と報道されれば金投資が注目され、金貨だけでなく純金のお鈴(おりん)にまで関心が集まったりします。しかし、安全資産と呼ばれる金であっても、価格が絶対に下がらないわけではありません。 仏壇の前で手を合わせたら金価格が上がるならこれほどありがたい話はありませんが、残念ながら相場は仏様にもお願いできないようです。
もちろん、個別株や金投資そのものを否定するつもりはありません。問題なのは「値上がりしているから」という理由だけで安易に飛びつくことです。
投資には利益も出れば損失も出ます。うまい話だけに目を奪われず、リスクを理解しておくことが大切です。
では「預金だけ」なら安心なのか?
ここで前回の話に戻ります。 「投資にはリスクがあって損をするかもしれない。なら預金だけにしておけば安心だ」と思われるかもしれません。
確かに銀行預金には「必要なときにすぐ使える」「預金保険制度(ペイオフ)で元本が保護される」という絶大なメリットがあり、日々の生活費や緊急資金には欠かせません。
しかし、預金最大の弱点はインフレです。
仮に、預金金利が年1%、物価上昇率が年3%だったとしましょう。 100万円を1年預けると、利息がついて101万円(※税引前)になります。しかし、物価は3%上がっているため、実質的にそのお金で買えるものは減っています。「口座の数字は増えているのに、購買力は落ちている」という状態です。これでは実質的な元本を守れているとは言えません。
では、国債ならどうでしょうか。 個人向け国債などは満期まで持てば国が元本と利子を保証してくれますが、やはり利回りがインフレ率を下回れば実質価値は減ってしまいます。
結局のところ、預金・国債・株式・金……それぞれに長所と短所があります。 「絶対に安全で、確実に儲かって、いつでも自由に使える」――そんな都合の良い金融商品は存在しません。
お金を「他人任せ」にしないということ
私は「誰もが株式投資をするべきだ」とは全く思いません。投資には間違いなく向き不向きがあります。 預金だけで十分な資産がありインフレにも耐えられる方や、株価の変動が気になって夜も眠れなくなるような方は、無理に投資をする必要はありません。
大切なのは、「自分のお金について、自分の頭で考えること」です。
- 銀行に預けるのも自分の判断
- 国債を買うのも自分の判断
- 投資信託を買うのも自分の判断
- 「何もしない」と決めるのも一つの判断
そして、どのような結果になっても誰も責任を取ってはくれないということです。 物価が上がって生活が苦しくなっても銀行は金利を上げてくれませんし、株価が下がっても証券会社は損失を補填してくれません。自分のお金の守り方は、最後に自分が決めるしかないのです。
年金生活者の投資は「勝ち負け」ではない
今年の日経平均は驚くほど上昇していますし、私が保有するS&P500も順調です。 しかし、日経平均の上がり幅に負けたからといって、悔しいとは思いません。投資の目的は「他人より高い利益を出すこと(勝ち負け)」ではないからです。
現役世代なら「できるだけ大きく資産を増やす」ことが目標になるかもしれません。 しかし、年金生活者である私にとっては違います。「これからの生活に必要な資金を確保しながら、無理なく、できるだけ楽しく使っていくこと」こそが目的です。
だから、今年15%上がったからといって取り崩し額を急に増やすつもりはありませんし、来年もし株価が下がったとしても慌てて売却するつもりもありません。
将来の生活費が不足しそうになれば、そのときの資産状況・物価・年齢・健康状態を見ながら計画を見直せばよいのです。20年後の生活を1円単位まで正確に予測できる人などいませんし、そもそも20年後まで自分が元気でいる保証もありませんからね。
おわりに
前回のブログでは「預金と運用はどちらも必要」とお話ししました。 そして今回の結論は、もう一つあります。
「運用でお金を増やすこと以上に、増えたお金をいつ・どのように使うかを考えることの方が、年金生活者には遥かに難しい」ということです。

お金に働いてもらう(運用する)ことも大切ですが、お金について自分の頭を働かせ続けることの方がもっと大切だと感じています。
さて、今日も証券口座の評価額を確認してみましょうか。 増えていれば、少しうれしい。 減っていれば、そっと画面を閉じる。
そして、どちらにしても今日の昼食は昨日と同じ。 これが、我が家の年金生活者の投資スタイルです。


コメント