私が64歳11か月で退職した理由

- 65歳まで働くと雇用保険が変わる?

2年前の退職時の備忘録

今月は私の誕生月です。

そして会社を退職してから、ちょうど2年が経ちました。

私は昭和34年9月生まれ。

最後に勤めていた会社の定年は65歳でした。

普通に考えれば、「あと1か月なんだから、65歳まで働けばいいじゃないか」となります。

40年以上会社員を続けてきたのですから、最後の1か月くらい働いても大差ありません。

ところが私は、65歳になる1か月前、64歳11か月で退職しました。

別に会社が嫌になって、「もう1か月も我慢できない!」と飛び出したわけではありません。

理由は、雇用保険でした。

この「たった1か月」の違いで、退職後に受け取れる雇用保険の仕組みが大きく変わることを知ったからです。

実際、私は退職後、雇用保険の基本手当を1か月あたり約22万円、約半年にわたって受給しました。

もちろん、それまでの給与に比べれば少ない金額です。

それでも、給与収入が突然なくなった退職直後に毎月20万円以上が入ってくる。

これは本当に助かりました。

今回は退職から2年。

当時を思い出しながら、なぜ私は「あと1か月」を残して退職したのかを書いてみたいと思います。


世の中は「65歳まで働きましょう」

現在、企業には65歳までの雇用を確保することが求められています。

正確には、すべての会社が「定年65歳」にしなければならないわけではありません。

65歳未満の定年を設けている会社は、

・定年を65歳まで引き上げる
・希望者全員を65歳まで継続雇用する
・定年制そのものを廃止する

このいずれかの措置を取る必要があります。

さらに今では、70歳まで働ける機会を確保することも努力義務になっています。

世の中は明らかに、「できるだけ長く働いてください」という方向です。

私自身も64歳11か月まで働きました。

ところが雇用保険を調べると、不思議なことがあります。

65歳になる前に退職するのと、65歳になってから退職するのでは、失業したときの給付制度が全然違うのです。

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65歳未満なら通常の「基本手当」

一般に「失業保険」と呼ばれているものは、正式には雇用保険の「基本手当」です。

当然ですが、「会社を辞めたので、お金をください」だけでもらえるわけではありません。

働く意思と能力があり、仕事を探しているにもかかわらず就職できない状態で、ハローワークに求職申込みをして失業認定を受ける必要があります。

そして、基本手当を何日間受け取れるのかは、

・離職時の年齢
・雇用保険に加入していた期間
・離職理由

などによって変わります。

90日の人もいれば、120日、150日、それ以上になる場合もあります。

私の場合は、約12年前の前回の退職時に、すでに基本手当を受け取っていたので、結果として120日分の基本手当を受給しました。

1か月あたり約22万円でした。


65歳以上で離職すると「50日分」に変わる

ところが65歳以上で離職した場合、通常の基本手当とは別の制度になります。

名称は、「高年齢求職者給付金」です。

何となく名前だけを見ると、「高齢者向けに手厚くなった給付なのかな?」と思ってしまいます。

しかし実際には、雇用保険の被保険者期間が1年以上なら、基本手当日額の50日分

1年未満なら30日分。

しかも通常の基本手当のように何か月にも分けて受け取るのではなく、一時金として支給されます。

長年雇用保険に加入していても、1年以上なら50日分です。

そこで私は考えました。

65歳まであと1か月働けば、最後の給与1か月分を受け取れる。

一方、65歳になる前に離職すれば、通常の基本手当の対象になる。

私の場合、実際に基本手当を約半年受給しました。

月約22万円です。

もちろん単純比較はできませんが、最後の給与1か月分を手放しても、退職後の生活を支えてくれる雇用保険の方が私には大きかったのです。


私には退職金制度がなかった

ここで重要なのが、私の最後の会社には退職金制度がなかったことです。

もし、「65歳の定年まで働けば退職金500万円」「1か月前に自己都合で辞めれば400万円」という会社なら、話はまったく違います。

失業給付が増えても、退職金が100万円減ったのでは意味がありません。

私の場合は、そもそも退職金がありません。

そのため、64歳11か月で退職することによって失う大きなお金は、主に最後の給与1か月分でした。

だから比較的判断しやすかったのだと思います。

ところが、ここにもう一つややこしい制度が絡んできます。

年金です。

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私たちは「年金60歳から65歳へ」の移行世代だった

今では、「年金は65歳から」というのが普通です。

しかし、以前は厚生年金を60歳から受け取る制度でした。

それをある日突然、「今日から65歳です」と変えたら大変です。

60歳から年金を受け取るつもりで人生設計をしていた人に、「すみません。あと5年間待ってください」では困ります。

そこで受給開始年齢を少しずつ、

60歳 → 61歳 → 62歳  → 63歳  → 64歳  → 65歳

と段階的に引き上げていきました。

その経過措置として設けられたのが、

特別支給の老齢厚生年金

です。


特別支給の老齢厚生年金は何歳からだったのか

報酬比例部分の受給開始年齢は、生年月日によって次のように変わっていきました。

受給開始年齢男性の生年月日女性の生年月日
60歳昭和24年4月2日~昭和28年4月1日昭和29年4月2日~昭和33年4月1日
61歳昭和28年4月2日~昭和30年4月1日昭和33年4月2日~昭和35年4月1日
62歳昭和30年4月2日~昭和32年4月1日昭和35年4月2日~昭和37年4月1日
63歳昭和32年4月2日~昭和34年4月1日昭和37年4月2日~昭和39年4月1日
64歳昭和34年4月2日~昭和36年4月1日昭和39年4月2日~昭和41年4月1日
特別支給なし昭和36年4月2日以降昭和41年4月2日以降

※一定の加入期間など、特別支給の老齢厚生年金そのものの受給要件を満たしていることが前提です。

私は昭和34年9月生まれです。

表の太字のところです。

つまり私は、64歳から65歳になるまでの1年間、特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分を受け取れる世代でした。

男性では、私より少し若い昭和36年4月2日以降生まれになると、この特別支給そのものがなくなり、原則65歳からの老齢厚生年金になります。

こうして表にすると、私がまさに「60歳から65歳へ移行していった最後の方の世代」だったことが分かります。


ここで失業保険と年金がぶつかる

ここから話が少しややこしくなります。

私は64歳になると、特別支給の老齢厚生年金を受け取っていました。

そして64歳11か月で会社を退職しました。

だったら、「会社を辞めた翌日にハローワークへ行けばいい」と思いますよね。

ところが、そうしませんでした。

理由は、雇用保険の基本手当と特別支給の老齢厚生年金には併給調整があるからです。

65歳になる前にハローワークで基本手当の受給手続きをすると、特別支給の老齢厚生年金は原則として支給停止になります。

つまり、「特別支給の年金も受け取って、失業保険も満額受け取って」という二重取りはできません。

考えてみれば、「世の中、そんなに甘くない」ということなのでしょう。


そこで私は65歳になるまで待った

私が退職したのは64歳11か月。

65歳まで、あと約1か月です。

そこで私は考えました。

65歳になるまでは、64歳から受け取っていた特別支給の老齢厚生年金を受け取る。

そして65歳になってからハローワークで求職申込みをする。

そうすれば、特別支給の老齢厚生年金は65歳で終了しています。

65歳からは、本来の老齢基礎年金と老齢厚生年金が始まります。

そして雇用保険については、離職した時点では64歳11か月です。

つまり私の退職から65歳以降までの流れは、

64歳 : 特別支給の老齢厚生年金を受給

64歳11か月 :会社を退職

65歳まで約1か月 :まだハローワークで基本手当の手続きをしない

65歳 :特別支給の老齢厚生年金が終了。本来の老齢基礎年金+老齢厚生年金へ

65歳到達後 :ハローワークで求職申込み

基本手当を約半年受給 :月額約22万円

という流れになりました。

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ところが年金事務所で大慌て

ここで事件が起きました。

年金事務所で相談したときです。

話をしている中で、「65歳になるまでに離職票をハローワークへ提出しないと、失業保険で損しますよ」という趣旨の説明を受けました。

私は、「えっ!」です。

ちょっと待ってください。

私は、そのために64歳11か月で会社を辞めたのです。

65歳になる前に辞めれば通常の基本手当。

65歳になってから辞めれば高年齢求職者給付金。

そう理解していました。

ところが、「ハローワークへ行くのも65歳になる前でなければダメ」と言われたように受け取ったのです。

それでは困ります。

しかも65歳になる前に基本手当の手続きをすれば、今度は特別支給の老齢厚生年金が調整されてしまいます。

私の頭の中は、「年金を取るのか?」「失業保険を取るのか?」「そもそも1か月早く辞めた意味は何だったんだ?」となりました。

退職したらのんびりできると思っていたのに、いきなり制度との知恵比べです。


ハローワークでは「そのようなことはありません」

そこでハローワークで確認しました。

すると答えは、「そのようなことはありません」でした。

ホッとしました。

重要だったのは、私が65歳になる前に離職していたこと。

私の離職日は64歳11か月。

実際にハローワークで求職申込みをしたのは65歳になってから。

それでも私の場合、通常の基本手当の受給資格として扱われました。

つまり、「65歳になる前に会社を辞めたか」と、「65歳になる前にハローワークへ行ったか」は同じではなかったのです。

この経験から学んだことがあります。

年金のことは年金事務所。

雇用保険のことはハローワーク。

2年前の退職時の思い出

制度がつながっているので全部一緒に見えますが、最終確認はそれぞれの専門窓口です。


ただし「65歳まで申請を待てばいい」ではありません

ここは非常に重要です。

私の場合、「65歳までハローワークへ行かなかった」ということができたのは、退職した時点ですでに64歳11か月だったからです。

待ったのは、わずか約1か月。

雇用保険の基本手当には受給期間があります。

原則として、離職日の翌日から1年間です。

例えば64歳になったばかりで会社を辞めて、

「では年金が止まるともったいないから65歳まで1年間待とう」

などということをすれば、今度は基本手当を全部受給できなくなる可能性があります。

ですから、「65歳まで申請を待った方がお得」という話ではありません。

私の場合は、64歳11か月で退職したという特殊なタイミングだったから成立した話です。


退職金がある人は絶対に計算した方がいい

そして、この話を読んで、「それなら私も65歳になる直前に辞めよう」と思うのは早計です。

私は退職金制度のない会社でした。

しかし、多くの会社には退職金があります。

会社によっては、定年退職なら満額。定年前の自己都合退職なら減額。という規定があります。

例えば、

65歳まで働けば退職金500万円。
64歳11か月で自己都合退職したら400万円。

これなら、いくら基本手当の方が多くても、簡単に「1か月早く辞めた方が得」とは言えません。

さらに、

・最後の1か月分の給与
・賞与
・退職金
・企業年金
・有給休暇
・雇用保険
・公的年金
・健康保険料
・社会保険料

なども考える必要があります。

定年直前は、感情だけで退職日を決めるのではなく、一度電卓を叩いた方がいい。

私は自分で経験して、そう思いました。


会社員時代には気にもしなかった雇用保険

会社員の頃、給与明細を見るたびに、

健康保険料。
厚生年金保険料。
雇用保険料。
所得税。
住民税。

いろいろ引かれていました。

雇用保険料についても、「また何か引かれているな」程度でした。

しかし実際に退職して、給与がなくなってから月約22万円の基本手当を受給すると、

「ああ、これは本当に保険だったんだな」と思います。

もちろん給与より少ない。

それでも約半年間、生活を支えてくれました。

退職金制度がなかった私にとっては、とても大きな存在でした。

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退職から2年、今なら笑える

あれから2年。

今月、また誕生日を迎えます。

振り返ってみると、退職前後はずいぶんいろいろ調べました。

年金はいくらになるのか。

健康保険はどうするのか。

雇用保険はいくらもらえるのか。

いつハローワークへ行けばいいのか。

住民税はいくら来るのか。

会社員時代には会社が手続きをしてくれていたことを、退職した途端に全部自分で考えなければなりません。

しかも当時は、年金事務所で、「65歳までにハローワークへ行かないと損しますよ」と言われたと思い込み、大慌て。

ハローワークへ行って、「そのようなことはありません」と言われてホッとする。

今なら笑い話です。

でも当時は、「せっかく1か月早く会社を辞めたのに!」と本気で焦りました。

65歳まで働くか。

その直前で退職するか。

どちらが得なのかは、人によって違います。

退職金がある人。

特別支給の老齢厚生年金がある人。

ない人。

失業給付の日数が違う人。

条件はそれぞれです。

だから私の経験を、

「64歳11か月で辞めるのがお得です」

という話にするつもりはありません。

ただ、一つ言えるのは、会社の定年日をそのまま自分の退職日にする前に、一度、自分の場合の制度を調べてみる価値はある。ということです。

会社を辞める日は、たった一日。

しかし、その一日をいつにするかで、その後のお金が大きく変わることがある。

退職から2年。

これは、私が実際に経験して初めて知ったことでした。

※本記事は、筆者自身の経験や調査に基づく情報提供を目的として作成しています。
 投資には価格変動などのリスクがあり、元本割れとなる可能性があります。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行ってください。
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 本記事は、投資助言、税務相談、保険加入等を推奨するものではありません。
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