- 輪廻(りんね)は回る
最近の観光地のニュースを見ていると
前回、世界から取り残された日本は詰んでいるのかと言う話を書きました。
最近、テレビやネットニュースを見ていると、観光地の話題がよく取り上げられます。築地ではマグロ串が5,000円。海鮮丼が1万5000円というのも有るらしい。
ニュースを見るたびに「誰がこんな値段で食べるんだろう」と思うのですが、実際には外国人観光客が次々と購入しているようです。
外国人観光客限定というわけではありませんが、お城を改装した宿泊施設では、一泊二名で100万円を超えるプランまであるそうです。
その様子を見ながら、私はふと、自分の若い頃の海外旅行を思い出しました。
1ドル100円を切っていた「超円高」の記憶
今の若い人には信じられないかもしれませんが、私が若かった頃は、1ドル100円を切るような時代がありました。80円台、90円台という超円高の時代です。
当時、海外旅行へ行くと、日本人は「とても裕福な国から来た人」という扱いを受けることがありました。ホテルも、食事も、お土産も、すべてが安く感じられるのです。
もちろん、現地の人にとっては決して安いわけではありません。むしろ高級店です。しかし、日本人から見ると「せっかく旅行に来たのだから」と、少し奮発すれば手が届く感覚でした。
そんな海外旅行の中で、今でも忘れられない、少し心苦しかった記憶があります。
30代の頃、海外のレストランで食事をしていた時のことです。私たちは旅行者として純粋に食事を楽しんでいましたが、窓の外を見ると、こちらをジッとこちらを見ている現地の子供たち。
それ以外でも、何となく「日本人はお金持ちだな」という視線を感じることがあり、嫌な態度を取られたわけではないものの、「自分たちと現地の人では価値の違うんだな」と、少し複雑な気持ちになったことを覚えています。
30年を経て、立場が逆転した現在
それから30年以上が過ぎました。 今度は日本が観光立国を目指し、多くの外国人観光客が訪れるようになりました。そして、現在の歴史的な円安です。外国人から見れば、今の日本は非常に「安い国」になっています。アメリカやヨーロッパの人が日本へ来ると、「こんなに安くていいのか」と驚くそうです。
私たちが昔、海外で感じていたことを、今は外国人が日本で感じているのです。
象徴的なのが、先ほどの築地です。マグロ串や海鮮丼の5,000円という価格は、日本人である私なら、見た瞬間に「ちょっと無理だな」と諦めてしまいます。しかし、外国人観光客は平然と購入していきます。なぜなら、彼らにとってはそれほど高くないからです。
ニューヨークやロンドン、パリの物価に比べれば、日本での5,000円は旅行中の「普通の出費」に過ぎません。
最近話題になる「一泊100万円以上の宿」も同じです。私にはおよそ縁のない世界ですが、予約は次々と埋まるそうです。これも日本人向けではなく、海外の富裕層をターゲットにしているのでしょう。外国からお金を落としてもらい、地域経済が潤う。ビジネスとしては、決して悪いことではありません。
ここで誤解してはいけないのは、外国人観光客が悪いわけではないということです。彼らは自分の国で普通に働き、普通に稼ぎ、そのお金で旅行を楽しんでいるだけです。それは昔の日本人も全く同じでした。立場が入れ替わっただけなのです。
「日本が貧しくなった」だけなのか?
こうした状況を見て、よく「日本は貧しくなった」という言葉を耳にします。確かにそういう側面もあるかもしれません。しかし、私はそれだけではないと思っています。
むしろ、「まわりの国々が豊かになった」という面が大きいのではないでしょうか。
例えば韓国。私が若い頃は日本との経済格差がかなりありましたが、今では平均賃金も大きく上昇しています。中国も同様で、沿岸部の都市などでは、日本人の感覚からすると驚くような所得を得ている人も珍しくありません。
- 日本が少し足踏みをしていた部分もある。
- 他の国々が大きく前進した部分もある。
現実には、その両方が起きているのだと感じます。
歴史を振り返れば、これは当たり前の話でもあります。かつて世界を支配したスペイン、海運で栄えたオランダ、産業革命を起こしたイギリス――どの国も永遠に豊かであり続けたわけではありません。国の力も経済力も、時代とともに変化し、その順位は常に入れ替わっていくものです。
私たちは長い間、「日本は豊かな国であり続ける」と思い込んでいたのかもしれません。しかし実際には、人口減少が進み、賃金は伸び悩み、その間に世界は成長を続けました。気がつけば、外国人観光客が高級店へ入っていく姿を、私たちが外から「高いなあ」と眺める立場になっていたのです。
結び:輪廻は回る
若い頃、海外旅行先のレストランで感じた、あの小さな違和感。現地の人が、少しうらやましそうにこちらを見ていた光景。
あれから30年以上が経ち、今度は日本で、外国人観光客が高級店へ入っていく姿を、私たち日本人が眺めています。

外国人が悪いわけではありません。昔の私たちが、まさにその姿だったのですから。
国の豊かさも、人の立場も、決して永遠ではありません。あの頃の私は、まさか日本がこのような日を迎えるとは想像もしおきませんでした。しかし歴史を見れば、これは決して特別なことではなく、世界の自然な営みなのでしょう。
世界の中で豊かな国が入れ替わり、人々の立場も変わっていく。そしてまた、次の世代へと受け継がれていく。
若い頃、海外で感じた小さな心苦しさ。 今、日本で感じる小さな寂しさ。
その両方をしみじみと振り返りながら、私は思います。 やはり、輪廻は回るのである、と。


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