忘れることが、最強のセキュリティ?

- サイバー攻撃急増と、企業が情報を持ちすぎる問題

個人情報漏えいニュースが多い

最近、企業や大学からの個人情報漏えいニュースが、やたらと多い気がします。

「不正アクセスにより、お客様の個人情報が流出した可能性があります」

またか。そう思っていると、翌日には別の企業が同じような発表をしている。

以前、私自身も企業から個人情報漏えいのお詫びメールを受け取ったことがあります。もっとも、その企業でいつ何を購入したのか、さっぱり思い出せませんでした。

こちらが忘れているような昔の取引情報まで、企業は律儀に保管していたようです。ありがたいのか、迷惑なのか……。

そこで気になりました。

「これほど情報漏えいが続くのは、日本だけなのだろうか?」

もし海外で増えていないなら、日本が集中攻撃されていることになります。気になって少し調べてみました。

日本だけじゃない! 世界中でサイバー攻撃が急増中

結論から言うと、日本だけではありませんでした。世界中でサイバー攻撃が猛威を振るっています。

セキュリティ企業「Check Point Research」が2026年10月に発表した調査結果によると、2026年9月に世界の企業・組織が受けたサイバー攻撃は、1組織あたり週平均2,803件に達したそうです。

前年同月比で48%増、前月(8月)と比べても16%増。ここ数か月で世界的に攻撃が跳ね上がっています。

比較項目2026年9月の状況
世界の週平均攻撃件数(1組織あたり)2,803 件
前月(8月)からの増加率16% 増
前年同月からの増加率48% 増
ヨーロッパの前年同月比増加率61% 増

地域別に見るとヨーロッパでは前年比61%増、北米でも増加しており、日本だけが狙われているわけではなさそうです。

もう一つ興味深いのは、世界で最も狙われているのが「教育・研究機関」だという点です。

  • 教育・研究機関:週平均 6,656 件(前年比 59% 増)
  • 通信業界:週平均 3,483 件
  • 政府機関:週平均 3,443 件

日本でも大学の情報漏えいが目立ちますが、世界中の大学が同じように標的になっています。学生・教職員・卒業生の個人情報だけでなく、最先端の研究成果も集まるため、攻撃者にとって魅力的な標的なのでしょう。

ただし、この数字はあくまで「サイバー攻撃の検知件数」であり、実際に情報が盗まれた件数ではありません。防ぎきったケースも含まれますが、世界中で脅威が急増していることだけは間違いありません。

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公表された個人情報漏えいは「氷山の一角」に過ぎない?

さて、ここからが私の素朴な疑問です。

ニュースになっている情報漏えい事件は、実際に起きている被害のどれくらいなのでしょうか。

私は「ほんの一部(氷山の一角)」ではないかと思っています。

40年以上会社勤めをしてきた経験から言っても、企業にとって情報漏えいは、できることなら表に出したくない問題です。信用は失墜し、取引先からは管理体制を疑われ、顧客は離れ、上場企業なら株価も暴落する。できれば内々に処理したいと経営者が考えても不思議ではありません。

もちろん日本には個人情報保護法があり、一定規模以上の漏えいが発生した場合は「個人情報保護委員会への報告」と「本人への通知」が法的義務となっています。しかし、世間向けにプレスリリースを出して公表することまで全てのケースで義務づけられているわけではありません。

さらに厄介なのは、「企業自身が盗まれたことに気づいていない」ケースです。

泥棒が家に侵入しても、住人が気づかなければ被害届は出ません。企業のネットワークに攻撃者が何か月も潜伏し、気づかれないよう少しずつ情報を抜き取っていることだってあるのです。

私たちがニュースで見ているニュースは、巨大な氷山の海面に出ている一部分だけなのかもしれません。

そもそも企業は、なぜそんなに情報を抱え込むのか?

漏えいが起きるたび、企業は「セキュリティを強化し再発防止に努めます」とお決まりの謝罪をします。

ですが、私は根本的な疑問を感じます。

「そもそも企業は、なぜそこまで大量の個人情報を持ち続ける必要があるのか?」

ネット通販で買い物をすれば、配送のために住所や氏名が必要です。しかし、商品が届き、決済も完了したあと、その情報を何年も保存し続ける必要があるのでしょうか?

税務上の記録保管や保証対応など、一定期間の保存義務があるのは理解できます。ですが、購入した本人が忘れ去っているような過去のデータを、無期限に近い形でデータベースに残しておく必要があるのか。

どんなに頑丈な金庫を作っても、中に宝が入っていなければ盗まれるものはありません。個人情報も同じではないでしょうか。

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2027年4月、オンライン本人確認の仕組みが変わる

「情報を預けすぎる問題」といえば、もう一つ気になるのが運転免許証です。

本来は自動車を運転する資格を証明する書類なのに、いつの間にか銀行口座の開設やネットサービス登録時の「代表的な身分証明書」になりました。「スマホで免許証の表裏を撮影して送信してください」と言われる機会も増えました。

しかし、住所や生年月日、顔写真、免許証番号が載った画像を民間企業のサーバーに預けるのは、漏えいリスクを考えると少々恐ろしいものがあります。

実はこの点について、国も制度の見直しを進めています。

2027年4月1日から、「犯罪収益移転防止法(犯収法)」に基づくオンライン本人確認のルールが改正されます。

銀行などがオンラインで本人確認を行う際、これまで使われていた「運転免許証やマイナンバーカードの画像を撮影して送信する方式」は原則廃止となります。今後は、カード内のICチップ読み取りや電子証明書を活用した確実な認証へ一本化される方向です。

※なお、マイナンバーカードの公的個人認証(署名用電子証明書)を利用する場合、企業側に12桁のマイナンバーそのものが渡るわけではありません。必要な認証結果だけが安全にやり取りされる仕組みです。

単なる「書類の画像」を送信・保存させるやり方から脱却し、企業が無駄な画像をデータベースに溜め込まなくて済むようになる。これは非常に好ましい変化だと感じます。

67歳の私の個人情報に、どれほどの価値があるのか?

ここまで書いておきながら言うのもなんですが、私自身は自分の個人情報が漏れることについて、そこまで神経質ではありません。

銀行口座からお金を盗まれるのは困りますが、それ以外で他人に知られて困るような情報が自分にあるだろうか……と考えてしまうのです。

人に言えない秘密の口座もなければ、人に言えない妖しい趣味もありません。

67歳の年金生活者の買い物履歴など、日用品、健康食品、DIYの道具くらいなものです。もし流出データを盗んだ犯罪者がそれを見たら、

「なんだこの老人の履歴は。色気も何もないじゃないか」

とがっかりするに違いありません。

個人情報漏えいに困らないシニア

……というのは老人の軽い冗談ですが、もちろん隠すことがないからといって、勝手に公開されていい理由にはなりません。病歴や家族関係、住所、電話番号などは誰にとっても大切な情報ですし、詐欺やなりすまし二次被害の危険もあります。

最高のセキュリティは「持たないこと」、そして「忘れること」

サイバー攻撃がこれだけ高度化・急増している時代に、すべての攻撃を100%防ぐ完全な防壁を作るのは不可能です。

ならば、発想を変えるべきではないでしょうか。

  • 企業は必要以上の情報を集めない
  • 目的が終わり、保管義務期間が過ぎた情報は速やかに消去する
  • 本人確認は画像データではなく、ICチップ等の電子認証で行う

「持ち続けること」を前提に守りを固めるのではなく、「持たないこと(持たせないこと)」でリスクを減らす。

利用規約の長文プライバシーポリシーを読まされ、途中で嫌になって「同意する」を押してしまう私たちユーザー側にとっても、預ける情報自体が少ない社会の方がずっと安心です。

67歳にもなると物忘れが増えて困ることも多いのですが、企業のデータベースも時には「適度に忘れてくれること」こそが、一番優秀なセキュリティ対策になるのかもしれません。

※本記事は、筆者自身の経験や調査に基づく情報提供を目的として作成しています。
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 本記事は、投資助言、税務相談、保険加入等を推奨するものではありません。
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