ゆうちょ銀行で人気の投資信託、同じ日経平均連動なのに手数料が約3.6倍?

X(旧Twitter)で気になる投稿

先日、何気なくX(旧Twitter)を眺めていると、気になる投稿が流れてきました。

最近、何かと調子のよい日経平均株価。

その日経平均への連動を目指す投資信託の中で、ゆうちょ銀行の販売ランキング上位にあるのが、

大和ストックインデックス225ファンド

だというのです。

ランキングは集計期間や販売金額、販売件数などの条件によって順位が変わるので、「いつでも絶対に1位」という意味ではありません。

しかし、この商品がゆうちょ銀行で長く販売され、多くの人に保有されている商品であることは間違いありません。

そこで気になったのが、運用成績よりも信託報酬です。

このファンドの信託報酬は、年0.517%程度です。

投資信託ですから、信託報酬がかかること自体は当然です。

自分で225銘柄を買い集め、銘柄の入れ替えまで行い、日経平均と同じように運用するなど、普通の個人にはできません。

「日経平均と同じように運用してください。私は昼寝をしています」

と運用会社にお願いするのですから、手数料が無料になるはずはありません。

問題は、手数料がかかるかどうかではなく、同じ目的の商品と比べて高いか安いかです。

同じ日経平均連動でも信託報酬は違う

日経平均株価への連動を目指す投資信託には、信託報酬が年0.1%台の商品が複数あります。

代表的な低コスト商品である「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」の信託報酬は年0.143%以内です。三菱UFJアセットマネジメントは、同シリーズを低コストを重視した商品として提供しています。

両者の差は、

0.517%-0.143%=年0.374%

です。

0.374%と言われても、あまり大きな数字には見えません。

スーパーで「本日0.374%引き」と書かれていても、誰も走って買いに行かないでしょう。

しかし、投資信託では残高が数百万円になり、それが毎年、長期間続きます。

【図表1】100万円から1,000万円を保有した場合

投資残高大和225・年0.517%年0.143%の商品1年間の差
100万円約5,170円約1,430円約3,740円
500万円約25,850円約7,150円約18,700円
1,000万円約51,700円約14,300円約37,400円

500万円を保有していれば、年間の差は約1万8,700円です。

1回だけなら、「まあ、居酒屋を数回我慢すればよいか」と思うかもしれません。

しかし、信託報酬は毎年かかります。

しかも、請求書が郵送されてくるわけではありません。

「今年の信託報酬は2万5,850円です。振り込んでください」

と書かれた赤い封筒が届くなら、多くの人が驚いて商品を見直すでしょう。

実際には、信託財産の中から毎日少しずつ差し引かれ、基準価額に反映されます。

目に見えにくいからこそ、気づかないまま払い続けやすいのです。

日経平均に連動する代表的な商品を比較

2026年7月時点の代表的な商品を並べると、次のようになります。

【図表2】日経平均連動商品の信託報酬比較

投資信託名主な購入場所購入時手数料信託報酬・年率税込100万円保有時の年間概算
大和 ストック インデックス225ファンドゆうちょ銀行など購入方法による約0.517%約5,170円
eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)マネックス、SBIなどネット証券では原則0円0.143%以内約1,430円
iFree 日経225インデックスマネックス、SBI、楽天などネット証券では原則0円約0.154%約1,540円
iFreeETF 日経225証券取引所証券会社による0.132%約1,320円

iFreeETF 日経225の信託報酬は年0.132%です。ただし、ETFは取引所で売買する商品なので、普通の積立投資信託とは購入方法や分配金の扱いなどが異なります。

ゆうちょ銀行も、窓口で購入する場合とネットで購入する場合で手数料体系が異なる場合もありますが、現在はネット購入を中心に手数料引き下げが進んでいます。
したがって、ゆうちょ銀行の商品がすべて高コストだという話ではありません。

それでも、「大和 ストック インデックス225ファンド」とeMAXIS Slimを比べると、信託報酬は約3.6倍です。

同じ日経平均への連動を目指すのに、この差は小さくありません。

毎月10万円を5年間積み立てた場合

私は会社員時代、毎月10万円を投資信託に積み立てていました。

そこで、毎月10万円を5年間、合計600万円積み立てた場合を試算してみます。

手数料控除前の運用利回りを年5%とし、それぞれの信託報酬を差し引いて計算した概算です。

【図表3】毎月10万円を5年間積み立てた場合

項目大和225eMAXIS Slim
積立元本600万円600万円
5年後の評価額約672万円約678万円約6万円
信託報酬による負担差の概算約6万円

5年間で約6万円の差です。

「20年も投資するつもりはない。5年なら6万円程度だろう」

そう思う人もいるでしょう。

しかし、両方とも同じ日経平均への連動を目指す商品です。

東京から大阪まで同じ新幹線、同じ座席、同じ到着時刻なのに、一方だけ運賃が6万円高いと言われたら、私は安い方に乗ります。

6万円あれば、焼き鳥盛り合わせを何皿食べられるでしょう。

計算する前に、妻から「そんなに食べたら病院代の方が高くなる」と止められそうです。

20年間では約170万円の差

では、毎月10万円の積立を20年間続けた場合はどうでしょうか。

積立元本は2,400万円です。

同じく手数料控除前の利回りを年5%として試算します。

【図表4】毎月10万円を20年間積み立てた場合

項目大和225eMAXIS Slim
積立元本2,400万円2,400万円
20年後の評価額約3,874万円約4,043万円約169万円
元本からの増加額約1,474万円約1,643万円約169万円

5年間では約6万円だった差が、20年間では約169万円になります。

期間が4倍だから、差も単純に4倍になるわけではありません。

積立残高が増えるほど信託報酬の金額も増え、さらに手数料として差し引かれたお金は、その後の運用に回りません。

失われた手数料にも、本来なら運用益が付いたはずです。

つまり、手数料の差にも複利が働きます。

約170万円。

さすがに「焼き鳥数本分の違い」と笑って済ませられる金額ではありません。

軽自動車なら現実的に購入を検討できる金額です。

同じ日経平均に投資しただけなのに、商品を選ぶ段階で約170万円の差が生まれる可能性があります。

将来の日経平均が上がるかどうかは誰にも分かりません。

しかし、信託報酬が高いか安いかは、契約する前から分かります。

悪質な商品だと言いたいわけではない

ここは誤解のないように書いておきます。

「大和 ストック インデックス225ファンド」は、日経平均に連動しない怪しい商品ではありません。

2005年に設定され、長期間運用されてきた普通の日経平均インデックスファンドです。2026年6月末時点の純資産総額も600億円を超えています。

日経平均が上昇すれば、基本的にはこのファンドも値上がりします。

私が疑問に思うのは、この商品が悪質かどうかではなく、今から新しく購入する人が、低コスト商品との違いを十分に理解したうえで選んでいるのかという点です。

投資信託の販売や勧誘を行う人は、金融商品の知識や法令についての外務員資格を持ち、外務員登録を受ける必要があります。日本証券業協会によれば、外務員とは証券会社や銀行などに所属し、顧客に金融商品の販売・勧誘を行う人です。

もちろん、ゆうちょ銀行も、法令を守り、商品内容やリスクについて適切な説明を行うという勧誘方針を公表しています。

ですから、

「郵便局員がノルマのために、高齢者をだまして売っている」

などと、証拠もなく断定するつもりはありません。

ただ、窓口で、

「日経平均に連動する分かりやすい商品です」

「ゆうちょ銀行で多くの方が購入しています」

とは説明されても、

「同じ日経平均に連動する商品なら、ネット証券には信託報酬が4分の1程度の商品があります」

とまで説明されているのでしょうか。

販売金融機関が、自社で取り扱っていない他社の商品まで積極的に紹介するとは考えにくいでしょう。

規則に違反していなくても、顧客が市場全体を比較しないまま、割高な商品を選んでしまうことはあります。

「郵便局の人が勧めてくれたから安心」

生命保険と投資信託では商品も制度も違います。

また、最近報道された生命保険会社をめぐる問題と、今回の投資信託販売を不適切販売のニュースと同一視することもできません。

ただ、金融商品をよく知らない顧客が、商品の中身よりも販売員との人間関係や会社への信頼で契約してしまう構図には、どこか似たものを感じます。

「有名な会社だから安心」

「担当者が親切だから安心」

「以前から知っている人だから安心」

それは、担当者が信用できる人かどうかの判断材料にはなります。

しかし、商品の手数料が安いことの証明にはなりません。

特に田舎では、郵便局は単なる金融機関ではありません。

昔から地域にあり、年金を受け取り、貯金を預け、保険にも入り、顔なじみの職員がいる。

都会のネット証券より、地域の郵便局の方が何倍も身近です。

そんな田舎で暮らす親から、

「郵便局の人に勧められて、投資信託を始めた」

と聞いたら、皆さんは安心するでしょうか。

それとも、少し心配になるでしょうか。

郵便局で売られている商品だから危険なのではありません。

親切な職員が勧めた商品だから悪いわけでもありません。

しかし、親切な職員が勧めたからといって、手数料まで安いとは限りません。

親に「投資するな」ではなく「商品名を教えて」

高齢の親に対して、

「投資なんて危ないからやめなさい」

と言うだけでは、話を聞いてもらえないかもしれません。

それよりも、

「契約する前に商品名を教えて」

「信託報酬を一緒に調べよう」

「同じ指数に連動する商品がほかにないか見てみよう」

と声をかける方が現実的です。

確認した結果、その商品を選ぶ理由が本人にあるなら、それでよいと思います。

対面で相談できる安心感や、ネット操作をしなくてよい利便性に、多少高い手数料を払うという考え方もあります。

事実、信託報酬(0.517%)が高めに設定されている背景には、「代行手数料(販売会社=ゆうちょ銀行が得る手数料)」が約半分の年0.22%(税込)程度含まれているという制度的理由があります。

ただし、その料金を理解したうえで選ぶことが大切です。

無知は損。でも誰でも何かを知らない

金融の世界では、知らないだけでお金を失うことがあります。

無知は損です。

しかし、これは金融知識のない人を笑う言葉ではありません。

私も知らないところで、毎日のように損をしているはずです。

たとえば居酒屋で、焼き鳥の盛り合わせを注文したとします。

今日の店は、もも、ねぎま、ささみ、ハツ、つくね、手羽先の6本で780円。

昨日の店は、もも、ねぎま、ささみ、ハツ、つくねの5本で820円。

「昨日の店の方が、1本少なくて値段も高かった!」

と気づいても、私は別に昨日の居酒屋の店員を問い詰めません。

ビールを飲みながら、

「まあ、昨日のつくねの方が大きかったからいいか」

と自分を納得させます。

居酒屋の焼き鳥の値段で一喜一憂してもね

焼き鳥なら差額は数十円です。

しかし、投資信託は20年間で約170万円の差になる可能性があります。

焼き鳥と違って、少し酔って忘れるには金額が大きすぎます。

投資信託を契約する前には、商品名と信託報酬を検索する。

同じ指数に連動する低コスト商品がないか確認する。

これだけでも、防げる損はあります。

将来の株価は選べません。

しかし、手数料は自分で選べます。

※本記事の信託報酬や試算は2026年7月時点の情報を基にした概算です。実際の運用結果は、相場、指数との連動差、売買費用、税金などによって異なります。投資判断は、必ず最新の目論見書を確認したうえで、ご自身の責任で行ってください。

※本記事は、筆者自身の経験や調査に基づく情報提供を目的として作成しています。
 投資には価格変動などのリスクがあり、元本割れとなる可能性があります。最終的な投資判断は、ご自身の責任において行ってください。
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 本記事は、投資助言、税務相談、保険加入等を推奨するものではありません。
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