― 会社が負担していた年金の話
先日、自分の年金額についてねんきんネットで調べていたときに、改めて気付かされたことがありました。
それは、
「私が払った厚生年金と同じくらいの金額を、会社も払っていた」
という事実です。
年金の話になると、
「自分はこれだけ払った」
「元は取れるのか」
という話になりがちですが、実は給与明細には載っていないお金が存在します。
今回は、43年間会社員として働いた私が、今さらながら気付いた「見えない人件費」のお話です。
厚生年金の平均受給額はどれくらい?
まずは現在の厚生年金受給額の平均を見てみましょう。
| 区分 | 平均月額 | 年額換算 |
|---|---|---|
| 厚生年金全体平均 | 約15.1万円 | 約181万円 |
| 男性平均 | 約16.7万円 | 約200万円 |
| 女性平均 | 約10.7万円 | 約128万円 |
私はというと、年額1,978,888円です。
月額にすると約16万4,900円。
男性平均の16万7,000円には少し届きません。
月にすると約2,000円ほど少ない計算です。
もっとも、私は転職を何度か経験しています。
失業期間中は厚生年金に加入していなかった時期もありますから、この結果はある意味当然でしょう。
昔から、「何事にもだいたい平均以下の男」と言われ続けてきました。
学生時代の成績も平均以下。
運動神経も平均以下。
背の高さも平均以下。
小遣いに至っては平均を大きく下回っています。
まさに、
ミスター・アンダーアベレージ。
ただ、年金については平均とほぼ同じですから、むしろ健闘した方かもしれません。
給与明細に書かれているのは半分だけ
現役時代、毎月もらう給与明細を見ていた方は多いと思います。
そこには、
- 基本給
- 残業代
- 各種手当
- 通勤費
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
などが記載されています。
そして給与から天引きされた額を見て、
「社会保険料、高いなあ……」
と思った経験がある人も多いでしょう。
私もそうでした。
しかし、給与明細に書かれているのは、実は本人負担分だけなのです。
会社負担分は書かれていません。
実際には会社も同じくらい払っている
社会保険は次のような仕組みになっています。
| 項目 | 本人負担 | 会社負担 |
|---|---|---|
| 厚生年金 | 50% | 50% |
| 健康保険(協会けんぽ) | 50% | 50% |
| 介護保険(40歳以上65歳未満) | 50% | 50% |
| 雇用保険(業種によって異なる) | 負担あり | 負担あり(会社の方が多い) |
| 労災保険 | 0% | 100%会社負担 |
つまり、給与明細に
「厚生年金 25,000円」
と書かれていたら、
会社もほぼ同額を負担しているということです。
厚生年金の「保険料」自体は完全折半(個人 9.15%:会社 9.15% = 計18.3%)ですが、児童手当の財源となる「子ども・子育て拠出金(0.36%)」だけは会社が全額負担しているため、会社側の支払いはほんのわずかだけ多くなります。
当時の私は、「また今月もたくさん引かれているな」としか思っていませんでした。
しかし会社側から見ると、
「また今月もたくさん払っているな」
だったわけです。
立場が変わると見え方も変わります。
私が受けてきた社会保険の恩恵
社会保険は単なる税金ではありません。
現役時代を振り返ると、その恩恵を何度も受けています。
まず健康保険。
家族が病院へ行ったときも、私自身が風邪をひいたときも、医療費の大部分は健康保険が負担してくれました。
転職で失業したときには、雇用保険のお世話になりました。
失業給付がなければ、当時はかなり苦しかったと思います。
そして現在。
毎月の生活を支えているのは厚生年金です。
現役時代は遠い未来の話だと思っていましたが、その未来は意外と早くやってきました。
気が付けば受給者側です。
43年間という長い会社員人生の結果が、今の年金になっています。
43年間で会社はいくら負担してくれたのか
以前、ねんきんネットで確認したところ、
私の保険料納付総額は、13,661,827円でした。
この中には失業期間中の国民年金なども含まれています。
おおまかに考えると、
会社員時代の厚生年金の本人負担額は約1,300万円程度でしょう。
そして厚生年金は会社と折半です。
ということは、会社も約1,300万円負担していた計算になります。
改めて数字にすると驚きます。
年間にすると約30万円
43年間働いたとして計算すると、
1,300万円 ÷ 43年
で、
平均すると年間約30万円。
毎年30万円ほどを会社が私のために負担していたことになります。
もちろん現金でもらったわけではありません。
給与明細にも載りません。
しかし会社にとっては確実な支出です。
つまり、私という社員を雇うために必要だった人件費なのです。
給与だけが人件費ではありません。
社会保険料も立派な人件費です。
会社は毎月の給料に加えて、将来の年金や医療制度を支える費用も負担していたわけです。
「会社負担分も給料だったのか?」という難しい話
ここで少し考えてしまいます。
もし厚生年金の会社負担分が存在しなかったら、そのお金はどうなっていたのでしょう。
全部が給料になったとは言えません。
会社も利益を出さなければなりませんし、設備投資や内部留保も必要です。
しかし経済学的な考え方では、
社会保険料が軽ければ、その一部は賃金として従業員に還元された可能性がある。とも言われています。
つまり会社負担分は、
「見えない給料」
とも考えられるわけです。
もちろん実際には年金制度や医療制度の維持に使われているので、単純な話ではありません。
それでも、給与明細に書かれていないから存在しないわけではない。
これは覚えておいても良いと思います。
社会保険料は企業にとって重い負担でもある
一方で、企業側から見ると社会保険料は大きな負担です。
最近は賃上げが話題になっています。
新入社員の初任給30万円というニュースも珍しくなくなりました。
しかし給料が上がれば、
厚生年金も上がる。
健康保険も上がる。
会社負担分も上がる。
つまり企業は、
給与以上のコスト増に直面します。
さらに原材料費の高騰。
エネルギー価格の上昇。
人手不足。
さまざまな問題を抱えながら経営しているわけです。
会社経営というのは、本当に大変なものだと思います。
退職してから見える景色もある
現役時代は、「会社はもっと給料を上げてくれ」と思っていました。
退職した今は、「会社も結構払っていたんだな」とも思います。
どちらも事実です。

社員の立場から見える景色と、経営者の立場から見える景色は違います。
そして年金受給者になった今だからこそ、
給与明細には載らなかった会社負担分の意味が少し分かるようになりました。
43年間働かせてもらい、年金も受け取れるようになりました。
振り返ると、
給与明細には書かれていなかったもうひとつの給料が、確かに存在していたのです。
ありがとう、狸社長。
本当にありがとうございました。
……いや、できれば現役時代のボーナスも、もう少しだけ上げてほしかったですが。
そこは今さら言っても遅いですね。
まとめ
- 厚生年金は本人と会社がほぼ半分ずつ負担している
- 給与明細に載るのは本人負担分だけ
- 私の場合、会社負担の厚生年金だけで約1,300万円と推定
- 43年間では平均で年間約30万円を会社が負担していた計算
- 給与だけでなく社会保険料も重要な人件費
- 年金受給者になって初めて見える会社負担の重みもある
現役時代は「引かれるお金」ばかりに目が行きます。
しかし退職後に振り返ると、会社が負担してくれていた「見えないお金」の存在にも気付かされます。
年金制度を考えるとき、自分が払った額だけでなく、会社が負担していた額にも少し目を向けてみると、また違った景色が見えてくるかもしれません。


コメント