東京では火葬場が足りなくなる?
「東京で火葬場が足りなくなるらしい」という話を聞きました。
東京都の資料によると、2024年度の都内における火葬件数は約15万件。高齢化のピークを迎える2065年頃には、年間死亡者数が約20万人に達すると予測されています。
現在の施設規模のままでは、2035年頃に需給がひっ迫し、その後は処理能力が不足する見通しです。死亡者が増える冬場に限ってみれば、2040年頃には最大稼働させても追いつかなくなる可能性があるのだとか。
現在でも冬場は混雑しており、申し込みから火葬まで平均約8日待つこともあるそうです。遺族にとっては、その間の遺体安置場所や費用の負担も深刻な問題です。さらに東京は民営火葬場の割合が高く、料金面での課題も指摘されています。
しかし、皮肉な事に、死亡者が増加し続けるわけではないことです。
いずれ多死社会のピークを越えれば、今度は増設した火葬施設が余る可能性もある。
足りないから増やす。しかし、数十年後には余るかもしれない。
土葬用地を大量に確保するのも、火葬場を次々と建設するのも簡単ではありません。
これからの東京は、火葬炉の増設だけでなく、既存施設の更新、稼働時間の調整、周辺自治体との連携などを組み合わせて考える必要がありそうですね。
生きている間は病院の予約が取れない。亡くなってからは火葬場の予約が取れない。日本はなかなか予約の難しい国になってきました。
※出典:東京都保健医療局「東京の火葬場について」「火葬場に係る検討会」関連資料
火葬場が足りないなら「土葬」にすればいい?
そこで「足りないなら土葬にすればいいのでは?」とふと思ったわけです。
調べてみると意外な事実がわかりました。実は、日本で土葬は法律で禁止されていません。「墓地、埋葬等に関する法律」では火葬と土葬の両方が認められています。
しかし、だからといって自宅の庭や近所の空き地に埋めるわけにはいきません。許可された墓地で手続きを行う必要がありますが、自治体の条例や墓地の規則で制限されていることが多く、実際に受け入れてくれる墓地を探すのは非常に困難です。
さらに、東京で土葬を増やそうとすれば莫大な「土地」が必要になります。火葬なら設備増設で対応できる部分もありますが、土葬は一人ひとりに土地が必要です。周辺住民の理解、地下水への配慮、衛生管理といった課題もあります。
火葬場が足りないから土葬にする。すると、今度は墓地が足りなくなる。問題を解決しようとして、別の問題を作ってしまうわけですね。
世界の葬儀事情とさまざまな葬送方法
日本では火葬率は99.98%。ほぼ100%ですが、世界を見渡すと事情はまったく異なります。

アメリカでは火葬率が6割を超えたものの今も土葬が広く行われていますし、ヨーロッパも国によって主流が異なります。イスラム教やユダヤ教では伝統的に土葬が重視され、ヒンドゥー教では火葬が中心です。
国によって統計の取り方が違うため「世界全体で火葬と土葬が何対何か」という正確なデータはありませんが、「日本の常識は世界の常識ではない」ことがよくわかります。
さらに調べると、チベットなどの「鳥葬」(遺体を鳥に委ねる)、船員などの歴史に見られる「水葬」(遺体を海に葬る※遺骨をまく海洋散骨とは別)、自然環境にさらす「風葬」など、実に多様な文化が存在します。
| 葬送方法 | 主な地域・宗教 | 世界での割合 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 火葬 | 日本、東アジア、ヒンドゥー教文化圏、欧米の一部など | 世界統計なし | 遺体を焼き、遺骨・遺灰を残す。日本ではほぼ100%が火葬。 |
| 土葬 | イスラム教、ユダヤ教文化圏、欧米など | 世界統計なし | 遺体をそのまま土中に埋葬する。広い土地や墓地の管理が必要。 |
| 鳥葬・曝葬 (ばくそう) |
チベット、ゾロアスター教など | 不明・少数派 | 遺体を鳥や自然環境に委ねる。宗教観と自然環境に根差した伝統。 |
| 水葬・海葬 | 船員・海軍の伝統など | 不明・少数派 | 遺体を海などに葬る。国や地域によって実施条件が異なる。 |
| 海洋散骨 | 日本、欧米など | 独立した世界統計なし | 火葬後の遺骨・遺灰を海にまく。火葬と重複する分類。 |
※世界全体の葬送方法別比率について、信頼できる統一統計は確認できていません。 火葬率を約40~50%とする民間推計もありますが、算出方法に不明確な点があり、確定値ではありません。 鳥葬・曝葬・水葬などは文化的に重要ですが、世界全体の比率は不明です。
| 宗教・文化 | 伝統的な葬送方法 | 補足 |
|---|---|---|
| イスラム教 | 土葬 | 原則として土葬を重視。火葬は認められないとされる。 |
| ユダヤ教 | 土葬 | 伝統的に土葬。宗派によって火葬への考え方に違いがある。 |
| ヒンドゥー教 | 火葬 | 火葬が中心。ただし、幼児や一部の宗教者などには例外もある。 |
| 仏教 | 火葬が多い | 日本などでは火葬が一般的。国や地域による違いが大きい。 |
| キリスト教 | 伝統的には土葬 | 現在は火葬も広く普及。教派や地域によって考え方が異なる。 |
| チベット仏教文化圏 | 鳥葬・火葬・土葬 | 鳥葬(天葬)が知られる。自然環境や宗教観が葬送方法に影響。 |
| ゾロアスター教 | 風葬・曝葬 | 伝統的には「沈黙の塔」で遺体を自然に委ねる方式。 |
※上記は伝統的な葬送方法の概要です。 実際には宗派、国、地域、時代、法律などによって異なります。 また、チベット仏教文化圏は仏教の一部であり、 独立した宗教として分類したものではありません。
どれが正しいという話ではなく、その土地の環境や宗教観の中で生まれた習慣なのでしょう。もっとも、私個人は鳥葬を提案されても遠慮したいところです。長年お世話になった自分の体ですからね。
我が家が退職時に「お墓」を用意した理由
お墓は、誰もがいずれお世話になる場所です。
住宅なら「日当たり」や「駅からの近さ」を気にしますが、お墓は日当たりが良くても本人にはわかりませんし、自分で電車に乗るわけでもありません。何より、一度入居したら引っ越しができない「終身が終わってから始まる契約」という非常に特殊な不動産です。
そんな我が家ですが、今の家に引っ越して2年後の退職したタイミングで自宅から数キロ離れた墓地に既にお墓を用意し、建立も済ませています。まだ誰も入っていない、いわば「新築未入居物件」です。

早めに準備した大きな理由は、我が家は夫婦二人暮らしだからです。
どちらかが先に亡くなれば残された方が管理できますが、二人とも亡くなったら誰が管理するのか。親戚にいつまでも負担をかけるわけにはいきません。また、子供がいる家庭であっても、遠方に住んでいたり高齢になったりと、先祖代々のお墓をずっと守り続けるのが難しい時代です。
だからこそ「自分たちの代で完結できる仕組み」が必要だと考えました。
管理者がいなくなったらどうなる? 我が家の契約内容
我が家のお墓には、非常に合理的な仕組みを取り入れています。
- 生前〜どちらかが存命の間:普通のお墓として使用(管理費は年に1回の口座引き落とし)。
- 二人とも亡くなった後:管理費の引き落としが3年間止まった時点で、遺骨は「共同墓地」へ自動的に改葬(永代供養)される。
この改葬費用もあらかじめ契約・支払いの中に含まれているため、後になって誰かに費用負担がかかる心配がありません。
最初から共同墓地に入る選択肢もありましたが、「元気に生きている間は自分たちのお墓を持ち、誰も管理できなくなったら共同墓地へ移る」というこの形が、私たちには一番しっくりきました。
お墓を管理するのは生きている人です。掃除や管理費の負担を含め、「自分たちが亡くなった後にできるだけ周囲に迷惑を残さないこと」こそが、本当の終活なのだと感じています。
人生最後のマイホーム。完成済み、入居日未定
東京の火葬場不足という話題から、我が家のお墓の話まで広がりました。
我が家の「人生最後の住まい」であるお墓は、すでに準備万端です。住宅ローンもなし、引っ越し費用も不要、家具家電も要りません。固定資産税もかからないので、なかなか経済的な物件です。
ただし、ひとつだけ困った点があります。それは「住み心地を事前に確かめる方法がない」こと。そして「一度入居したら二度と退去できない」ことです。
不動産なら空室が続くと困りものですが、お墓ばかりは空室が続くほどありがたい。せっかく建てた新築のお墓ですが、できればあと20年くらいは空き家のままにしておきたいものです。
「人生最後のマイホーム、完成済み・入居日未定」。
これが、67歳・年金生活者の我が家の現在の状況です。


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