平日の伊香保温泉で考えた

-中国レアアース輸出規制と日本企業の行方

平日の伊香保温泉という贅沢

定年退職して一番うれしいこと。
それは、土日祝日に観光地へ行かなくていい、というささやかな特権です。

世の中の皆さまが一生懸命働いている平日の昼間、私は伊香保温泉の湯けむりの向こうで「ああ、空いている」とほくそ笑む。

伊香保温泉で湯に浸かりながら国際経済を考える定年男性のイメージ

なんと根性の悪い憎まれ口でしょう、と自分でも思います。
しかし、事実なのだから仕方がない。

混雑のない石段街を歩きながら、私はふと思うのです。
「これも長年働いた者への、ささやかな利子みたいなものか」と。

さて、そんなわけで、この3日ほどブログは予約投稿。
土日月曜に書いておいた文章を、自動で公開してもらいました。

たった2日で世界は変わる

ところがです。

たった1〜2日、リアルタイムで更新しないだけで、世の中は見事に動いている。

湯船で「極楽、極楽」と言っている間に、中国は日本に対するレアアース関連の輸出規制を強め、具体的な企業名を挙げて監視対象を拡大したというニュースが飛び込んできました。

温泉と地政学。
これほど相性の悪い組み合わせもありません。

なぜ一般製造業まで対象なのか

対象企業を見ると、軍需産業だけではなく、一般製造業も含まれている。
「それはちょっと言いがかりでは?」と感じる企業もある。

たしかにEV開発に力を入れているSUBARUが入るのは理解できます。
EVにはネオジム磁石が必要で、そこにレアアースが欠かせない。

三菱重工とスバル、歴史と現在の交差

けれど、歴史を振り返ると、なんとも複雑な気持ちになるのです。

日中戦争のさなか、中国軍を苦しめた零式艦上戦闘機。
その設計を担ったのが三菱重工業。
そして最多製造を行ったのが、かつての中島飛行機。後の富士重工、いまのSUBARUです。

もちろん、今回の輸出監視が「80年前の恨み」だとは思いません。
現実はもっと冷静で、もっと打算的です。

半導体、EV、先端材料、防衛技術。
レアアースは現代の“戦略物資”。

中国にとっては「資源カード」。
日本にとっては「喉元」。

感情ではなく、構造の問題です。

とはいえ、歴史を知っている世代としては、企業名の並びを見ると、少し胸の奥がざわつく。
温泉で温まったはずなのに、妙に冷える。

海底6000mの夢より先に考えること

日本は海底6000メートルからレアアースを採取する、という夢のような計画を語っています。
もちろん技術的挑戦は素晴らしい。
しかし、湯船につかりながら私は思いました。

「夢を語る前に、目の前の蛇口をどうするのだろう」と。

外交的にどう交渉するのか。
経済的にどう依存度を下げるのか。
企業は代替調達をどう進めるのか。

資源は“あるかないか”ではなく、“使わせてもらえるかどうか”の問題なのです。

定年後、平日に温泉へ行ける自由。
それは嬉しい。実に嬉しい。

けれど、経済の世界では、自由はいつも条件付きです。

資源を持つ国。
技術を持つ国。
市場を持つ国。

それぞれがカードを握り、静かにテーブルを挟んでいる。

石段を下りながら、私は思いました。
混雑していない観光地は快適です。
しかし、世界は混み合っている。

温泉と地政学

湯気の向こうに見えたのは、のんびりした温泉街ではなく、せわしない国際経済の姿でした。

さて、次の予約投稿はどうしましょうか。
世の中は、私の入浴時間を待ってはくれません。

だからこそ、目を離さず、慌てず、しかし構造を見失わず。

温泉で整えた身体と同じように、
頭の中も、少し整えておきたいと思います。

現在、中国はレアアースの世界供給の多くを占めています。
日本企業が代替調達やリサイクル技術を進める中で、今後の外交・経済安全保障の動きは、日本経済全体に影響を与える可能性があります。

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