- でも、その200兆円を借金返済に使ったらダメなの?
ジリジリと円安が進みます
相変わらず円がジリジリと安くなっています。
1ドル160円から161円、162円へ。
食品もエネルギーも輸入に頼っている日本では、この数円の違いがスーパーの値札にじわじわ効いてきます。
30年前なら、 「1ドルです。」 と言われれば80円払えばよかったものが、
今では、 「1ドルです。」 と言われると160円以上払わなければなりません。
円の価値は半分になってしまったようなものです。
一方で私は、S&P500一本に絞って毎月10万円ずつ積み立てを始めた2023年6月は、1ドル約140円でした。
今は160円前後です。
2022年に135円でも「円安だ」と騒いでいたのに、今では160円を超えても驚かなくなってしまいました。私たちの感覚の方が円安に慣れてしまったのかもしれません。
| 年月 | ドル円 |
|---|---|
| 2022年6月 | 約135円 |
| 2023年6月 | 約141円 |
| 2026年7月現在 | 約160~162円 |
為替だけ見れば、 (160-140)÷140=約14% 何もしなくても14%の追い風。
投資をしている身としては、「おお、ありがたい」と言いたいところですが、その一方でスーパーでは「また値上げか」と財布を開くたびにため息が出ます。
投資口座は笑っているのに、食卓は泣いている。
年金生活者としては、なかなか複雑な気分です。
そんな円安になると、決まってニュースで聞くのが、 「政府・日銀による為替介入があるのではないか。」 という話です。
政府介入って、どこのお金を使っているの?
最初は私も不思議でした。
政府がドルを売って円を買う。 それは分かります。 …でも、そのドルはどこから出てくるのでしょう。 税金でしょうか。
実は違います。
使っているのは、財務省の外国為替資金特別会計(外為特会)が保有している外貨準備です。
仕組みは意外と単純です。
- 政府が持っているドルを売る
- 市場から円を買う
- 円の需要が増えるので円安を抑える
これだけです。
では、そのドルはどこから来たのでしょう。
昔、日本は今とは逆に円高で苦しんでいました。 その頃、政府は円を売ってドルを買い続け、そのドルで主に米国債などを保有してきました。 その積み重ねが、現在の外貨準備です。
日本のドル資産は約200兆円
この金額を知ったときは驚きました。
現在の外貨準備は、約1兆3,060億ドル。 1ドル160円で計算すると、約209兆円。
「えっ、日本ってそんなにドルを持っているの?」 と思いました。
もちろん209兆円全部が銀行預金ではありません。 おおよそ、
- 外国国債などの有価証券:約9,320億ドル
- 外国銀行への預金:約1,620億ドル
- 金(ゴールド):約1,240億ドル
- IMF関連資産:約720億ドル
という内訳です。 つまり、日本は世界でも有数の「ドル持ち」なのです。
ゴールデンウィークに11.7兆円使った
今年のゴールデンウィーク。 政府は円安を止めるために、約11.7兆円もの円買い介入を行いました。
ドルにすると約730億ドル。 外貨準備全体の約5~6%を一気に使った計算です。
「そんなに使ったの?」 と思いますが、その後どうなったでしょう。
しばらくすると市場は、「ああ、介入したんだね」くらいの反応になり、また円安方向へ戻ってしまいました。
まるで真夏の庭にホースで水をまいたようなものです。 撒いた直後は涼しくなります。 でも30分後には、「さっき水まいたよね?」というくらい乾いています。
だったら借金を返したら?
ここで素朴な疑問が湧きます。
日本には約200兆円ものドル資産があります。 一方で国は、毎年約11兆円もの国債利払いをしています。
私たちの家計に置き換えると、 200万円の貯金があるのに、毎年11万円の利息を払い続けながら借金を返さないようなもの。
普通の家庭なら、家族会議は5分で終わります。 「少しは返そうよ。」 となるでしょう。
では国も同じように、「ドルを売って借金を返せばいい」とはならないのでしょうか。

残念ながら、そんなに単純ではありません。
家計とは違う二つの財布
理由は、お金の種類が違うからです。
外貨準備はドル建て。 国債は円建て。
つまり、ドルの財布と円の財布。
家計で言えば、ドル札をたくさん持っている人が、「住宅ローンを返すからドルを全部円に替えてください」と言っているようなものです。
もちろん替えることはできます。
しかし、日本が一度に大量のドル資産を売れば、円高になったり、米国債価格が下がったり、自分の持っている残りの資産まで値下がりしたりします。
それに、実はこの「ドルの財布」に入っているお金は、昔、国がわざわざ「円の借金」をして買ったもの。
ドルを売って円に戻しても、そのとき作った借金が消えるだけで、私たちが心配している「ふだんの国の借金(普通国債)」が直接減るわけではない、という複雑な仕組みもあるようです。
さらに外貨準備は、日本が石油や天然ガス、食料を輸入するための保険でもあります。 世界で何か大きな危機が起きた時、「ドルがありません」では困るわけです。 ですから全部売ってしまうわけにはいきません。
でも、200兆円全部必要?
とはいえ、「全部売れ」と言っている人は、あまりいません。 私もそうです。
ただ、「200兆円全部必要なの?」とは思います。
保険は大切です。 しかし保険も掛け過ぎると保険料ばかり払うことになります。
例えば、200兆円ではなく180兆円。あるいは170兆円。 そのくらいでも十分ではないか。 その一部を国債の利払いを減らすために使えないのか。
そんな議論は、もっとあってもいいような気がします。
もちろん簡単な話ではありません。 世界の金融市場や為替、外交まで影響する問題です。 だから「はい、来月からそうしましょう」とはいかないでしょう。
年金生活者は難しい理論より財布を見る
経済評論家は難しい話をします。
金利差。 外貨準備。 実質実効為替レート。
どれも大切です。
でも年金生活者の私は、もっと単純です。 スーパーへ行って、 「また卵が高い。」 「コーヒーも上がった。」 「オリーブオイルは高級品になった。」 そう感じることの方がずっと身近です。
政府が11.7兆円介入したと言われても、その効果を私が実感できる日は、正直あまりありません。
だからこそ、「その200兆円、本当に今のまま持っているのが一番いい方法なの?」という疑問くらいは持ってもいいと思うのです。
もちろん私は経済学者ではありません。 ニュースを見ながらコーヒーを飲んでいる、どこにでもいる年金生活のおじさんです。
それでも、国が約200兆円のドル資産を持ち、毎年約11兆円もの利子を払いながら借金を抱えている。 その姿を見ると、「何かもう少し良い方法があるんじゃないの?」と、つい考えてしまいます。
そして今日もニュースでは、「円相場は1ドル162円台」。 スーパーでは、「輸入チーズ値上げ」。
家へ帰ると、S&P500の評価額はまた少し増えていました。
投資口座は笑っています。 家計簿は泣いています。
年金生活者としては、もうどちらを応援したらいいのか分かりません。



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