最近、自動運転の話題が少ない気がします
最近、自動車の自動運転の話が、あまり話題にならなくなってきた気がします。
2~3年前から大阪・関西万博の直前くらいまでは、やれ空飛ぶクルマだ、自動運転だと、未来の乗り物の話で盛り上がっていました。
ところが万博が始まってみると、話題になったのは56年前の大阪万博にも登場した「人間洗濯機」の現代版だったり、南極で発見された火星由来の隕石だったり。
私が子供のころに想像していた21世紀は、もう少し違いました。
車に乗って、「大阪までお願い」と言えば、
「かしこまりました」と車が勝手に走り出し、私はコーヒーでも飲みながら景色を見る。
疲れたら寝る。
目を覚ましたら大阪。
そんな未来だったはずです。
ところが2026年になっても、私は相変わらず自分でハンドルを握っています。
人類の夢だった自動運転車は、いったいどこへ行ってしまったのでしょう。
自動運転は消えたわけではない
もちろん、自動運転の研究そのものが止まったわけではありません。
アメリカや中国では、地域を限定して自動運転タクシーが営業しているところもあります。
先日、日本でも2028年度中に都内で100台規模で無人タクシーを実用化すると発表されました。
しかし私たちが普通にディーラーへ行って、「これ1台ください」と購入できる乗用車の世界になると、状況は少し違います。
現在の主役はレベル2、あるいはレベル2+です。
そして、一部のメーカーがレベル3。
完全自動運転に近いレベル4やレベル5は、普通の自家用車ではまだかなり遠い存在です。
どうやら世界の自動車メーカーも、「一気に完全自動運転へ行こう」という勢いから、「まず、今使える運転支援をもっと賢くしよう」という方向に少し変わってきたように見えます。
レベル2と3の間には、とんでもなく大きな壁がある
数字だけ見ると、レベル2の次がレベル3。
たった1つ上がるだけです。
しかし、この1段が大きい。
レベル2では、車がハンドルやアクセル、ブレーキを操作してくれても、運転の責任は基本的に人間です。
- 車線中央を走る。
- 前の車に合わせて速度を変える。
- 渋滞時にはハンドル操作までしてくれる。
- 条件によってはハンドルから手を離せる。
かなり便利です。
しかし、「ちゃんと前を見ていてくださいね」というのが大前提です。
一方、レベル3になると、一定条件下ではシステムそのものが運転主体になります。
つまり、「今は車が運転しています」という世界に踏み込む。
すると突然、話が難しくなります。
事故が起きたら誰の責任なのか。
センサーが故障したらどうするのか。
カメラが汚れたら。
突然の豪雨は。
道路工事は。
落下物は。
そしてシステムから突然、「ここから人間に代わってください」と言われたとき、スマホを見ていた人が瞬時に状況を理解できるのか。
ハードルが一気に高くなります。
各メーカーの状況
ここで各メーカーを見ると面白いことが分かります。
| メーカー | 主なシステム・商品名 | レベルの目安 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| トヨタ/レクサス | Toyota Teammate/Lexus Teammate「Advanced Drive」 | 2 | 高速道路で車線・車間維持、分岐、車線変更、追い越しなどを支援。ドライバー監視を前提に、人と車が協調する考え方。 |
| 日産 | ProPILOT 2.0 | 2 | 高速道路で同一車線ハンズオフに対応。ナビや高精度地図を利用し、追い越しや分岐のための車線変更も支援。次世代AI運転支援も開発中。 |
| ホンダ | Honda SENSING Elite/Traffic Jam Pilot | 3 | 2021年にLEGENDで世界初の量産車レベル3型式指定を取得。高速道路の渋滞時など限定された条件下でシステムが運転主体となる。 |
| SUBARU | EyeSight X | 2 | 高精度地図とカメラを活用。渋滞時ハンズオフ、車線変更支援、カーブや料金所前での減速、ドライバー異常時対応などを備える。 |
| マツダ | MAZDA CO-PILOT CONCEPT/DEA | 2系+将来技術 | 完全自動運転よりも人間を見守る思想が特徴。ドライバーの異常を検知すると警告し、減速・停止や緊急通報を行う方向で開発。 |
| Mercedes-Benz | DRIVE PILOT/MB.DRIVE ASSIST系 | 2+/3 | DRIVE PILOTで条件付きレベル3を実用化。ただし利用条件やコストの問題もあり、2026年にはより広範囲で使えるレベル2+系への比重を高めている。 |
| BMW | Highway Assistant/Personal Pilot L3 | 2/3 | 高速道路でのハンズオフ運転支援を展開。レベル3のPersonal Pilotも開発・投入したが、2026年には市場性からレベル2+系を重視する方向。 |
| GM (Cadillac/Chevrolet等) |
Super Cruise | 2+ | 対応道路でハンズオフ走行。車線中央維持、ACC、自動車線変更などを行う。ドライバーは前方監視が必要。 |
| Ford | BlueCruise | 2+ | 対応高速道路でハンズオフ走行が可能。ドライバーモニターで前方を見ているか確認しながら運転を支援する。 |
| Tesla | Autopilot/FSD(Supervised) | 2 | 市街地を含め高度な運転操作を行うが、Supervisedの名称通りドライバー監視が前提。見た目の自動化度は高いが制度上はレベル2。 |
| Hyundai/Genesis | HDA2/次世代Level 2+・2++ | 2~2+ | 高速道路で車間・車線維持や車線変更を支援。2028年ごろからNVIDIAと協力した高度なLevel 2+/2++の展開を計画。 |
| Volvo | Pilot Assist | 2 | ACCとステアリング支援を中心に、速度、車間、車線維持などを支援。「自動運転」より安全な運転支援を重視。 |
| XPeng(中国) | XNGP/VLA 2.0 | 2+中心 | 高速道路だけでなく市街地まで含めたAI運転支援を積極展開。大量の走行データとAIを利用し、レベル4技術の研究も進める。 |
世界のメーカーも実は考え方がバラバラ
日本国内メーカー
トヨタ/レクサスのAdvanced Driveは、車を完全に自立させるというより、人と車を「Teammate=仲間」と考える思想です。
日産のProPILOT 2.0は、高速道路でのハンズオフを早くから積極的に進めてきました。
SUBARUのEyeSight Xも、高速道路の渋滞時ハンズオフ、車線変更支援、カーブ前の減速など、
「人間が楽になるところは積極的に車が手伝う」という方向です。
一方、ホンダは少し違います。
2021年、LEGENDのHonda SENSING Eliteで世界に先駆けてレベル3の型式指定を取得しました。
つまり日本メーカーは、決して自動運転で何もやってこなかったわけではありません。
海外メーカー
海外ではMercedes-BenzもDRIVE PILOTでレベル3を実用化。
BMWもPersonal Pilot L3を投入しました。
ところが面白いのは、その先です。
レベル3は確かにすごい。
しかし使える道路、速度、天候などの条件が限定され、LiDARなど高価なセンサーや冗長化されたシステムも必要になる。
結果として車は高くなる。
そして2026年になると、Mercedes-BenzやBMWでさえ、レベル3一本槍ではなく、もっと広い場面で利用できるレベル2+を重視する方向へ動いています。
要するに、「すごいけれど時々しか使えない機能」より、「完全自動ではないけれど毎日使える機能」のほうが、お客さんには喜ばれる。
TeslaもFSD、つまりFull Self-Drivingという非常に勇ましい名前を付けていますが、現在の商品はFSD(Supervised)。最後に「監視付き」と付いています。
結局、運転手は見ていなければいけません。
GMのSuper Cruise、FordのBlueCruiseも高度なハンズオフ運転を実現していますが、基本はレベル2系。
中国のXPengなども猛烈な勢いでAI運転支援を開発していますが、自家用車の主戦場はやはり高度なレベル2です。
世界中で、「人間を完全に運転席から追い出す」ことの難しさが分かってきたのかもしれません。
だったら、もっと別のことを自動化してほしい
そこで私は思います。
完全自動運転をそんなに急がなくてもいいのではないか。
その代わり、「人間が危ない判断をしたとき、車が止めてくれる」方向へもっと進んでくれないでしょうか。
たとえば豪雨です。
先日の千葉県の豪雨でも、道路の冠水が問題になりました。
特に怖いのがアンダーパスです。
いつも通っている道路なのに、短時間の集中豪雨で水がたまる。
しかも運転席から見ると、水深がよく分かりません。
「前の車も行ったから大丈夫だろう」
「このくらいなら行けそうだ」
「SUVだから多少は大丈夫」
そんな判断をしてしまいます。
私も、絶対にそんなことを考えないとは言い切れません。
しかし冠水道路は見た目以上に危険です。
水が深ければエンジンやモーター、電装品に問題が起きる。
さらに水位が上がれば、車外へ脱出すること自体が難しくなります。
だったら車が止めてくれればいい。
「その道路には行きません」というナビ
今の車にはナビもGPSもカメラもミリ波レーダーもあります。
通信機能を持つ車も増えています。
気象情報もあります。
道路の通行止め情報もあります。
それらを組み合わせれば、「この先のアンダーパスは豪雨のため冠水する可能性があります」と判断して、最初からルートを変更する。
さらに現場まで来てしまっても、前方カメラなどから道路の異常を認識し、「冠水の危険があるため進入しません」と車が止まる。
私「前を走っている車もいるから大丈夫でしょう。行けるんじゃない?」
車「行けません」
私「いや、ちょっとくらい……」
車「迂回します」
これでいいのです。
大阪まで寝て連れていってくれなくてもいい。
水の中へ突っ込まない車のほうが、私は先に欲しい。
煽り運転も車が拒否すればいい
もう一つ欲しいのが、「煽り運転のできない車」です。
煽り運転は社会問題になり、罰則も強化され、ドライブレコーダーも普及しました。
それでもなくなりません。
それなら、そろそろ車の側にも協力してもらえばいい。
現在の車はすでに、前の車との距離を測定しています。
ACCを使えば、安全な車間距離を保ちながら前車に追従します。
衝突しそうなら自動ブレーキも作動する。
つまり車は、「前の車に近すぎる」ことを知っているわけです。
ならば、人間が意図的にアクセルを踏み込んで前車との距離を詰め続けようとしたら、
「車間距離が危険です」と警告する。
それでも踏めば、「これ以上加速できません」でいい。
運転手「もっと詰めろ!」
車「嫌です」
煽り運転終了。
これほど分かりやすい安全装置はありません。
もちろん車が勝手に判断するのも難しい
ただし、これは簡単ではないでしょう。
前の車が突然割り込んできて、一時的に車間距離が短くなることもあります。
事故を避けるため、逆に加速しなければならない場面もあります。
緊急車両を避けるため急な車線変更をすることもある。
単純に、「車間距離10メートル以下は禁止」では危険です。
そこでAIでしょう。
車間距離だけでなく、速度、アクセル操作、ブレーキ操作、車線変更、接近している時間、前車が離れた後に追いかけたか、などを総合的に見る。
数秒だけ接近したのか。
何度も繰り返し接近しているのか。
かなりの違いがあります。
これなら、「危険回避」と「煽り運転」をある程度区別できるようになるのではないでしょうか。
さらに煽り運転らしい動作を検知したら、ドラレコ映像を自動保存する。
これは被害を受ける側だけではなく、自分自身が感情的になったときの抑止にもなります。
マツダの考え方は意外と私の理想に近い
各社の取り組みを見ていて、今回の私の考えに近いと思ったのがマツダです。
MAZDA CO-PILOT CONCEPTは、「運転そのものを全部車に任せる」だけではなく、「人間を見守る」という考え方が強い。
ドライバーが突然意識を失った。
正常に運転できなくなった。
そんなとき車が異常を察知し、減速・停止したり、緊急通報したりする。
こちらの方向は非常に現実的だと思います。
SUBARUにもドライバー異常時対応システムがあります。
つまり、「人間を運転席から追い出す」より先に、「人間が運転できなくなったとき助ける」
技術はすでに始まっているのです。
私はレベル5より賢いレベル2が欲しい
考えてみると、私は完全自動運転車が本当に欲しいわけではありません。
車の運転そのものは嫌いではありません。
高速道路を何時間も走るなら車に手伝ってほしい。
渋滞も任せたい。
でも山道に入ったら、自分でハンドルを握りたい。
ワインディングロードまで車に任せて、私は助手席のように座っているだけでは面白くない。
だから、「全部やってくれる車」より、「危ないところだけ助けてくれる車」のほうが私には合っています。
高速道路では車線を維持してくれる。
渋滞では前車についていく。
突然人が飛び出したらブレーキをかける。
運転手が気を失ったら停止する。
逆走しようとしたら止める。
冠水道路には入らない。
煽り運転をしようとしても車が拒否する。
これだけできれば、私は十分です。
車は人間の命令をすべて聞かなくてもいい
これまで自動車は、「人間の操作に忠実であること」が良いことだと考えられてきました。
アクセルを踏めば加速する。
ハンドルを切れば曲がる。
ブレーキを踏めば止まる。
しかし今は少し違います。
前に障害物があるのにアクセルを踏み込めば、踏み間違い防止装置が加速を抑える。
車線をはみ出せば警告する。
衝突しそうなら、人間がブレーキを踏まなくても車が止まる。
つまり車はすでに、「その操作は危険です」と人間に逆らい始めています。
私は、それでいいと思います。

人間は必ず間違えます。
判断を誤ります。
腹も立てます。
焦ります。
疲れます。
眠くもなります。
ときには、
「これくらい大丈夫だろう」
という根拠のない自信も持ちます。
車まで一緒になってその判断に付き合う必要はありません。
「運転しなくていい車」より「危ない運転ができない車」
レベル5の完全自動運転。
乗り込んで目的地だけ告げれば、あとは寝ていても到着する。
確かに夢があります。
でも、その夢が実現するまで待っている間にも交通事故は起きます。
豪雨で車が水没します。
煽り運転も起こります。
アクセルとブレーキの踏み間違いも起こります。
それなら自動車メーカーには、「全部私に任せてください」という車を完成させる前に、「それは危ないので、私はやりません」と言える車を作ってほしい。
人間より頭のいい車でなくてもいい。
人間が一瞬だけバカな判断をしたとき、
車のほうが少し冷静でいてくれればいい。
私「この冠水、行けるんじゃない?」
車「行きません」
私「ちょっとだけ」
車「迂回します」
そして煽り運転をしようとして、
運転手「もっと詰めろ!」
車「お断りします」
私は、そんな車なら十分「賢い車」だと思います。
自動運転技術が少し足踏みしている今だからこそ、「運転しなくてもいい車」だけを目指す必要はありません。
その途中で生まれた技術を使って、「危ない運転ができない車」を作る。
完全自動運転より先に、私はそちらをお願いしたいと思っています。


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