日本は何日耐えられる?ホルムズ海峡危機と石油備蓄230日の真実

-日米首脳会談と日本経済への衝撃【後編】

前編からの続き

中東情勢が緊迫すると、必ず話題になる言葉があります。

日本には石油備蓄が230日分ある」(経済産業省 資源エネルギー庁)

この数字を聞くと安心する人もいます。
しかし逆に、「230日しか持たないのか」と不安になる人もいます。

実際、この数字には少し誤解があります。
石油備蓄230日分という数字だけを見ると、日本は半年以上大丈夫に見えます。

しかし現実は、もう少し複雑です。

今回は、日本のエネルギー安全保障について
石油備蓄の本当の意味を整理してみたいと思います。

石油備蓄230日の本当の意味

日本の石油備蓄は世界トップクラス

日本の石油備蓄は大きく分けて3種類あります。

種類日数
国家備蓄約145日
民間備蓄約90日
合計約230日

この石油備蓄量230日分は、世界でもトップクラスです。

資源の少ない国である日本が、過去のオイルショックの教訓から整備してきた仕組みです。

230日という数字の誤解

ただし、この石油備蓄230日という数字は

すべて自由に使える石油

という意味ではありません。

ここを誤解すると、現実が見えなくなります。

民間備蓄は「備蓄」ではなく在庫

石油物流を維持する運転在庫

石油備蓄の中で約90日分を占めるのが民間備蓄です。

しかし、これは実際には「備蓄」というより企業の運転在庫と言った方が正確です。

 ・製油所
 ・タンカー
 ・油槽所
 ・ガソリンスタンド

こうした石油の流通を維持するために必要な在庫です。

つまり、これは物流を止めないための在庫です。

これをすべて使ってしまえば、
逆に流通そのものが止まってしまいます。

製造業から見た在庫と備蓄

この話を聞くと少し違和感があります。

製造業では当然のように持っている在庫を「備蓄」と呼ばれてしまうと、

「それなら在庫は経理上、資産から外してもいいのでは?」

と言いたくなる人も多いのではないでしょうか。

つまり、230日という数字のうちかなりの部分は

社会を回すための最低在庫なのです。

備蓄は一気に使えない

石油放出の速度には限界がある

もう一つの問題があります。

それは

放出速度

です。

石油備蓄は、ダムの水のように一気に市場へ流せるわけではありません。

備蓄の放出には
 ・設備
 ・物流
 ・輸送
などの制約があります。

市場供給を完全には補えない理由

つまり

備蓄がある = 供給が完全に止まらない

という意味ではありますが

市場を完全に補えるわけではない

ということです。

石油備蓄と製油所の問題

備蓄は原油である

石油備蓄の多くは原油です。

私たちが使う

・ガソリン
・軽油
・灯油

にするには製油所が必要です。

製油所は簡単に増産できない

ここにも大きな問題があります。

タンカーが来ないから停止
政府命令で放出するからフル稼働

そんな簡単な話ではありません。

製油所は巨大なプラントであり、安定稼働を前提に設計されています。

ここで思い出すのが、昨年の米不足です。

古米や古古米が放出されましたが、精米所の処理能力がボトルネックになりました。

石油の場合はそれよりはるかに大規模です。

しかも石油は

 ・電力
 ・物流
 ・化学
 ・農業
 ・漁業

など、ほぼすべての産業に関係しています。

米がなければパンという代替もありますが、石油にはそれほど簡単な代替がありません。

ホルムズ海峡危機で最初に起きること

燃料不足ではなく価格高騰

ホルムズ海峡が緊張状態になると、最初に起きるのは燃料不足ではありません

起きるのは価格高騰です。

原油価格が上がると

 ・ガソリン
 ・軽油
 ・電気
 ・物流
 ・食品

すべての価格に影響します。

まだ日本に向かうタンカーが止まっていなくても、市場の不安だけで価格は上がります。

日本のエネルギーの弱点

石油よりも弱いLNG

意外かもしれませんが、日本は石油よりLNGが弱いと言われています。

理由は

・発電の約3割
・都市ガス

がLNGだからです。

電力と都市ガスへの影響

もし中東危機でカタールのLNGが止まるような事態になれば、
電力供給や都市ガスにも影響が出る可能性があります。

本当に怖いのはパニック

オイルショックのトイレットペーパー騒動

そして最も怖いのは心理的パニックです。

人々が「燃料がなくなるかもしれない」と思い始めると

ガソリン満タン
灯油買いだめ

が始まります。

すると需要が急増し、本当に供給が追いつかなくなります。

物不足でパニックになる国民と今回も同じことが起こることで不安になる

私が中学生の頃、1973年の第一次オイルショックでは、日本でトイレットペーパー騒動が起きました。

紙の供給は止まっていませんでした。

しかし買いだめが起きたため、本当に店からトイレットペーパーが消えました。

最近の米不足と同じ構造

そして最近の米不足も同じ構造です。

需要が急増し、心理的パニックが広がると供給が追いつかなくなります。

日本はどれくらい耐えられるのか

短期ショックには強いが長期危機に弱い構造の日本

こうした条件を考えると、
日本のエネルギーの持ち時間は次のように考えられています。

状況持ち期間
短期危機数週間
中期危機2〜3ヶ月
長期封鎖半年以内に深刻化

つまり

短期ショックには比較的強い

しかし長期危機には弱いという構造です。

このまま進展が無ければ、

備蓄が有るから230日は大丈夫。

ではなく、100日後、ゴールデンウイーク明けくらいには、
 ・電力
 ・物流
 ・化学
 ・農業
 ・漁業
すべての産業がパニック状態になっているかもしれません。

世界は海峡を守ろうとする

ホルムズ海峡が止まれば影響を受けるのは日本だけではありません。

中国
韓国
インド
ヨーロッパ

すべての国に影響します。

そのため世界は必ず海峡を開けようとします

歴史的にも
ホルムズ海峡が完全封鎖された状態が
長く続いた例はほとんどありません。

日本外交の難しいバランス

だからこそ日本は

アメリカとの同盟
中東との関係

この両方を維持しなければなりません。

もし日本が軍事行動で強く関与すれば、
中東との関係に影響する可能性があります。

しかし関与しなければ、
同盟関係に影響が出るかもしれません。

そのバランスを取るのが外交です。

そして今、その難しい判断が日米首脳会談の場でも問われています。

何を言い出すか分からない大統領 と 言わなくてもよい事を口走ってしまう首相

どうかこの問題が、さらに大きな衝突に発展しないことを願うばかりです。

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